BookSynapse

一部物語の種明かしの部分をCSSで隠してあります。
消えている部分」を見たいときはマウスで選択、反転して読んでください。

カテゴリ一覧: [Reader日記]/ [今月の三冊]/ [注目新刊]/ [bk1はてな]/ [その他本に関する話題]/ [bookG]/ [はてな全般]
[過去の記事一覧]   id:Hebi:about/ 24d/ a/ b/ d/ f/ i/ グループ:BookSynapse/MultiSynapse

2005-09-30

[]今月の三冊200509 4/62冊 はてなブックマーク - 今月の三冊200509 4/62冊 - BookSynapse

マンガをたくさん読んだので冊数がかさんだ…。(10/30更新)

造事務所『人間関係がニガテでもうまくいく天職ガイド』ISBN:4331511170

冒頭で「全く人間関係がないのは無理だ」ってきちんと言ってるし、持続可能性や、安定度、収入の高さ、なりやすさにも言及してる親切さ。しかしまあこうしてみると、やっぱり特殊技能系、しかも要才能な仕事が多くて、人生は甘くない。

そしてあとがきも言っているように、どっちかっていうと人間関係が苦手な人は、少し余裕がある職場*1で人と接しながら小さな成功体験積んだ方が回復は早いっていうのがありそうだ。営業なんかは論外としても。

マーカス・セジウィック『臆病者と呼ばれても―良心的兵役拒否者たちの戦い』ISBN:4251098331

徴兵を拒むことがとんでもないことだったのは日本の戦前を思い浮かべれば簡単に理解できるけれど、イギリス徴兵制が敷かれたのはWWIが初めてだったということをはじめて知る。イラク戦争の時に、ドビルパンが言ったように、ヨーロッパの国々は何度も血みどろの戦争を経験して成熟してきたのだと実感した。

しかし兵役拒否運動が地下で営々と続けられたり、そのための援助が密かに続けられたり、イギリスという国の底力を感じる。なんだかんだいっても、兵役拒否者たちは一人も死刑にはならなかった。それをみんなよく分かっていて、戦場で死んだ兵士に比べて自分たちが特につらい思いをしたとは思っていない。

戦闘行為と、それにつながる仕事、そうでない仕事の区別も難しい。国が戦争しようとしているときに、何が戦争に荷担しない仕事かなんて、誰にも分からないのではないかと思う。

しかし一方で、今アメリカがしているような、一部だけを動員すればそれで済む戦争になってきたのもこういう流れがあったからだと感じる。いやだという人にはやらせなくていい、困窮している人に甘いえさをつり下げて、戦場へ行かせればいいんだと、アメリカは分かっている。

それがニューオリンズの洪水と重なる。被害を受けたのは、治水対策が十分でない、都市の貧しい人たちだったということ。途上国のようだというより、途上国を国の中に抱え込んでいる(わざと)という話をどこかで読んだ。これにどうやって対抗するかとても考えつかない。

原田正治 前川ヨウ『弟を殺した彼と、僕』ISBN:4591082350

殺人事件の被害者遺族の「とにかくこの気持ちをぶつけてやりたい」という当初の怒りから「赦すことと、死刑を望まないことは違う」へ、そして「赦す権利はあるのかどうか」という問いかけにまでいたる、長い長い道のり。

被害者は谷底に突き落とされ、そこへ加害者も突き落とすのが「死刑」だけれど、それより谷底の被害者に手をさしのべて欲しい」という被害者の孤独は胸に迫る。殺人犯には弁護士をはじめ、たくさんの人が支援の手をさしのべているのに、被害者には一時的に殺到するマスコミ以外誰もいないというのは今まで考えたこともなかった。

原田さんが人生の大半を費やしてたどり着いた「加害者も被害者もみんなそれぞれ違うけれど、その違いを考慮した上で面会や補償など、被害者の意志に応じてできることを増やして欲しい」という望みは言葉にしてしまえば簡単だけれど、重みがある。

長い年月をかけて裁判をし、刑が確定してもからもなお時間があったからこそ、こういう関わりが可能になったと思えば、あっさり死刑を執行してしまう最近の傾向が本当に被害者のことを考えた措置なのかどうかと考えてしまう。

あずまきよひこよつばと!』1~4 ISBN:4840224668ISBN:4840226741ISBN:4840228957ISBN:484023163X

こんなに普通のことしか描いてないのにこの面白さ。よつばは(いや、みんなか…)ちょっと変だけど。

ここに住みたいと一瞬思い、しかし私は近所の子どもとこんなに毎日根気よく寛大に遊べないし、いきなり「アイスちょーだい」っていわれたら絶対しつけに走るし、勝手に部屋に入られるのはいやだし、水鉄砲を部屋の中で撃ったらお仕置き確定。だからこれはユートピアでしかなくて、みんながこれを読んでこういう世界にあこがれながら個室にこもっている様子を想像して暗くなる…というところまでいってしまったのは考えすぎで、日常を愛するためのスイッチのひとつとして愛用していきたい。

*1:今はこれが極端に少ないからなぁ

2005-08-31

[]今月の三冊200508 5/24冊  はてなブックマーク - 今月の三冊200508 5/24冊  - BookSynapse

ずいぶん時間が経ったので消化されすぎてしまった。(10/30更新)

杉山春『ネグレクトISBN:4093895848

子どもの虐待には不幸の再生産的な構図が存在するというのはよく言われることで、この事件でもそういう要素は色濃い。ただ、親子間で悪い影響(社会生活・育児ノウハウの欠如による伝達不可能性)も与える反面、支え合っている(住む場所を与えたり、仕事を与えたり)面もあって、その支え(干渉と呼んでもいい)部分が希薄になって問題が深刻化したというまとめ方になっている。

読んでいて意外だったのは、事件を起こした夫婦の世代に近づくにつれ、悪い影響も、支えと一緒に弱まっているということ。時代背景もあるんだろうけど暴力や迫害行為は、祖父母の世代のほうがずっと激しい。家庭生活で与えられるストレスの総量は減ったのに、その帰結としての虐待育児放棄)が「子どもの死」という事態に至ってしまった事実を突きつけられると、その質がどうあろうととにかく誰かと関わって干渉を受けていたほうが良かったということになるわけで、その質より量の干渉を行政が担うのは本質的に無理だという絶望的な結論に達する。児童相談所や保健士がどんなに努力しても、そこには物理的な限界がある。

人の流動性を高めて効率を上げコストを省くことは、要するにゆがみを調整する安全弁としての「余裕」をどんどん換金しているのにほかならない。かつては村や会社といった共同体が全体で担っていたリスクをババ抜きのババのようにぐるぐる回す、そういう世の中への疑問に行き着いてしまうんだなぁいつも。→参考『希望格差社会

絲山秋子『スモールトーク』ISBN:454404099X

乗ってる車で人物像を描写する作家絲山秋子の真骨頂。特定の分野に耽溺している優れた作家*1は、読者にしてみるとほんとうにありがたい。

車音痴にしてみれば所詮みんな同じ車でしかなくて(確かに形はちょっと違うが)、たいした運転経験があるわけじゃないのにどんどん引き込まれるこの感じは貴重。読み終わって、いつもの自分の車に乗ったときの感じが全然違った。最後は主人公が食傷して、車も置き去りに放浪の旅に出てしまうのだけれど、電車の方が便利な都会の人にとって車なんてただの趣味という結論がちょっとだけショックだった。田舎では車がないと暮らせない。

ところどころに挿入される車のエッセイも実感がこもっていて、本編とのギャップがまた面白い。こっちは絲山版『働きマン』としても読める。究極の商用車にはぜひ乗ってみたいなぁ。

五十嵐大介『リトル・フォレスト』ISBN:406337551X

自分の暮らしがいかに人工物に頼っているのかということをちくちくと刺されるように感じる。働くことと食べることの間に、できるだけたくさんの過程を差し挟んで、そこに無理矢理食い込むことでしか私たちの大部分は生きていけないと思うと、自分がそもそも幽霊のような実体を持たないものに思えてくる。

ただ、このマンガにはこういう暮らしをしながら生み出される「食べていくには不必要な、よけいなもの」つまりこのマンガを描く行為の描写が無くて、そこにこそ食べて生きるだけでは満たされない何かが存在するんじゃないかと、もどかしくもある。

こうの史代『長い道』ISBN:4575939625

運命の恋ばかりがもてはやされる時世にあって、今や稀少な成り行き任せの夫婦の物語。選べることがいいこととは限らない、と言われたら反論したくもなるけど、生きること自体が勝手に与えられた命題だとすれば、意に反して押し寄せる諸々を、改めて我がものとしてつかみなおせるかっていうのが人間としてのしたたかさなのかとも思う。嘘から出たまことというか、どれだけ上手に自分をだませるかという…。なんか変な結論になった。

夏目漱石榎本ナリコ『こころ』ISBN:4091848168

印象的な台詞はほとんど網羅しているし、それがあんまり浮いてないから、良心的な漫画化だと思った。先生もKもこうしてみると子どもだなぁ。学生の頃は理解できなかった心臓を破って鮮血を注ぐくだりが今回やっと腑に落ちた。先生側の世代になりつつあるということかも。

*1:ゲームにおける長嶋有とか。スポーツにおける堀江敏幸とか。

2004 | 05 | 06 | 07 | 08 | 09 | 10 | 11 | 12 |
2005 | 01 | 02 | 03 | 04 | 05 | 06 | 07 | 08 | 09 |
2006 | 05 |
2012 | 01 |