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2004-07-11京極夏彦『百器徒然袋 風』

京極夏彦『百器徒然袋 風

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ISBN:4061823795

感想

榎木津探偵団バカ騒ぎシリーズ(←勝手にそう呼んでいる)。そもそも本島ってだれだっけというレベルなのでいやはや。羽田老人のことも忘れてるし。下記はその辺さっ引いて読んでください。

「五徳猫」は招き猫研究論文、「雲外鏡」は言ってみれば榎木津の体質攻略作戦失敗談。しかし○○してるところも見えちゃうってのは楽しいなぁ。言われてみればその通りだ。かねてから榎木津の体質についてはいろいろつっこみたかったので、これが読んでて一番楽しかった。「面霊気」、ばたばたしている割には最後がちょっと感傷的で変な感じ。雰囲気的にこれで薔薇十字探偵団も大団円?声を出して笑ったのはp371「多分、思い出そうとして被ったんですよ。」なるほどと思いながら笑ってしまった。

京極堂がやたらと軽々しく活躍してておかしかった。そもそもこのシリーズは作者によるパロディ小説みたいなところがあって、基本的にみんな戯画化されてるんだけど、ますます性格が変わってる。本島と被るせいか、はたまた最近どんどん変な人道を極めてきていて書きにくいのか、関口君がかけらも出てこない。鳥ちゃんや青木君や敦っちゃんやマチコや木場はお約束として出てくるのに。ああ伊佐間がいなかったか。最後に出てくる人は、なんかもう少しひねりがほしかった。ほのめかされていた頃の方がものすごく「この人が直接登場する場面を読んでみたい!」と思ってたのに。

関口君視点の話にも言えることだけど、トリックっぽく見えるのはたいてい語り手(この本だと本島)の現状認識がぼけぼけだからなので読んでいて冗長に感じていらいらしてしまう。おまけに関口君視点だとかすかに漂う幻想臭、耽美臭が本島君にはないのでよけいにつらい。まどろっこしい会話といい、どう考えても段ごとに字を納めるために無理してる。おまけに連載ものなのでいちいち人物関係の説明が入っていてもうそんなことはわかってるんだよと飽き飽き。読んでる間、とにかく早く読んじゃえとしか思えなくって、なんだか、もうあのころの気持ちで京極を読むことはないんだろうなぁとしみじみ思ってしまった。

見返しの招き猫群像、逆の手を挙げてる猫がいないか凝視してみたけど、いないみたい。

2004-05-30穂村弘『もうおうちへかえりましょう』

穂村弘『もうおうちへかえ

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ISBN:4093875081

内容

『世界音痴』ISBN:4093873739に続く歌人、穂村弘のエッセイ集。2002年から2004年前半までの諸雑誌掲載原稿を編集したもの。日常エッセイから懐古、読書エッセイを中心に、短歌鑑賞、恋愛論、不条理ショートショートを数編含む。

感想

I、II、IIIの三部構成で、Iは相変わらずの世界音痴ぶりがこれでもか、と披瀝され、事実上の続『世界音痴』になっている。IIは趣を変えて、いくら青春ゾンビといえど、人並みにおじさん的な感覚の芽生えもある、そのフィルタを通した現代批評的な要素を含んだ、脱「青春ゾンビ」的なもの。そしてIIIが、本の雑誌で連載されていた本に関するエッセイで、読後その書痴っぷりが強く印象づけられて、全体としては穂村弘という人の幅の広さ、多面性が印象に残る。

『もうおうちへかえりましょう』という誘ってるんだか気弱なんだか、何が言いたいのかいまいちよくわからないタイトルは、たぶんIIにつけたものなんだろう。この気弱かつ尊大な、ダメ人間のふりをするけどじつはもてまくるとんでもない男(ほめ言葉)が発するメッセージは、次第に地に足をつけつつある。ダメエッセイと比べるとその部分はいわゆる「よくある話」になっていないこともないけれど、誰もが感じていることを「楽しめる」文章にする芸を堪能できる、それだけでいいという気がしてくる。

外観

小林キユウ撮影のカプセルホテルでの写真。あいかわらずイメージ通りのいい写真で。ジャージとジーンズが似合う黒縁伊達めがねの40男。

帯の、

白馬に乗ったお姫様はまだ?

っていう文章は確かに文中にあったけど、白馬に乗ったお姫様なんか来ないことは、十分悟った上で、むしろそれを楽しんでいる(断じて楽しんでいない、ということならその副産物を利用している)ので、ちょっと看板に偽りありかも。

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続『世界音痴』として薦めるのはちょっと心が痛まないこともない。IIIの部分については、穂村版『吉野朔実劇場』として扱ってもいいような気がする。

反応

周囲はみんな楽しみにしてましたとも。ちなみに2004.5.30現在、アマゾンの『世界音痴』はまだちゃんと「た行の著者」に分類されている*1。修正される日はくるのだろうか。

関連

  • 吉野朔実劇場』ISBN:493846358XISBN:4938463873ISBN:4860110129…時々穂村弘が出演するのであわせて読むと状況が立体的になっておもしろい。(「恐怖的瞬間」)
  • 『子のつく女の子は頭がいい』ISBN:4896915828…子どもの名前というのは如実に価値観を反映する。世の中の急激な変化による世代の乖離は誰もが感じていることだとしても、その行く先を誰も知らない。(「「怜央」と「幸子」と「う」」)
  • 「リンダ リンダ」歌詞…初めて聴いたのは高校の文化祭で、90年代においてはすでに「定番」を通り過ぎて「古典」的位置づけらしかった。80年代論はなんかいい本がありそうだけど思いつかない。(「八〇年代最大の衝撃」)
  • 小倉千加子『結婚の条件』ISBN:402257884X酒井順子負け犬の遠吠えISBN:4062121182…「お互いに高めあう恋愛」の呪縛のくだりは、男の側からの「負け犬」論とも読めないことはない。ついでに山田昌弘『パラサイト・シングルの時代』ISBN:4480058184も。この人はパラサイト・シングルでもあったりする。(「愛の暮らし」「わかりあえるか」)
  • たぶん世にダメエッセイはたくさんあるんだけどオーケン原田宗典あたりしか思いつかない。ネット上には同類のWeb日記もたくさんあるけど、芸のうまさでは全然敵ではない。何たって年期の入り方が違う。

*1:「アシホたち」に詳述

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