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2004-05-11

京極夏彦『陰摩羅鬼の瑕』

[][][][][][]京極夏彦陰摩羅鬼の瑕はてなブックマーク - 京極夏彦『陰摩羅鬼の瑕』 - BookSynapse

ISBN:4061822934

5年ぶりの妖怪シリーズ最新作。

内容

信州白樺湖のほとり、通称「鳥の城」では主の婚礼の度に、新婦が殺される事件が4回も続いていた。5度目の婚礼にあたり、主である由良伯爵は、探偵榎木津に事件の防止を依頼する。

花嫁薫子や伯爵と親しく言葉を交わすうち、何としても事件を未然に防ぎたいと願う関口。しかし榎木津、関口の努力にもかかわらず花嫁は殺されてしまい、そこへ過去3回の事件を捜査した元警官の伊庭が到着、取り調べを始める。そして事件が起こったら真相を明らかにすると約束した中善寺が、ついに「鳥の城」へとやってくる。憑き物落としの拝み屋は、犯人と世間との「死」の概念の違いが招いた悲劇を語るのだった。

感想

前作『塗仏の宴』が読者の期待に応えようとあらゆる要素を詰め込んだ結果、いささか息苦しい状態になっていたのに比べれば、今回は至極シンプルな作り。『姑獲鳥の夏』以来「世界はひとつではない」「主観によって物事はいかようにも解釈される」という世界観を延々と繰り返してきたこのシリーズにおいて、犯人あての楽しみは前もって奪われている。全巻ひたすら「なぜ」の部分をあぶり出していく構造になっている。読者が慣れている分、カタルシスは薄いが、誤植かと思った表記「ご婦人」が核心に関わるヒントだったので、そこだけは意表をつかれた。

前回気になった、キャラクターを全員出さなくちゃ、とか絵になる場面を作らなきゃ、といった呪縛からある程度は逃れることが出来ているので、次は字面やレイアウトの呪縛から逃れていただきたい。全体に冗長なのはどう考えても、文章が2ページにまたがってはいけないという妙な縛りのせいだとしか思えない。

外観

帯がもうやけくそ。「京極小説」ってそれ何にも説明してないし。

凄い!京極小説。

あの「夏」の衝撃が甦る。未体験の京極ワールド。

何か矛盾してませんかこれ…。

例によって例のごとく、妖怪の図。これまた例によって厚いので、中の行を読むために力を入れると、背の部分が折れそうで怖い。装備する身にもなって欲しい。

宣伝

どうがんばっても、京極を続けて読んでいる人にしか薦められない。5年前に比べればどうしても勢力は衰え気味なので、もっと取っつきやすいものを一冊出してくれないだろうか。

反応

もちろん目を輝かせて楽しみにしている人も一部にはいる。

関連

  • 菊田まりこ 『いつでも会える』ISBN:4052010558…最初に連想したのはこの一冊。伊庭に京極堂が語るせりふはこの本の趣旨そのもの。
  • 内田かずひろ『ロダンのココロ』ISBN:4022572388…同じ状況も解釈次第で全く別の意味を持つ、ということの平易な例。もちろん伯爵ロダンである。
  • 内井惣七『科学の倫理学』ISBN:4621070541…捏造関係でWebcat Plus検索。「盗作事件、捏造事件など様々な事例」
  • 松谷みよ子監修『はやたろう』ISBN:4097472267…早太郎の話は「やまたのおろち」の話にもちょっと似ている。化け物を倒した後、遠い道のりを故郷まで走って帰ってくるあたりが泣ける。早太郎リンク(GIFアニメ「file5 早太郎」が面白い)

儒学や弔いの関係で柔らかい入門書はないだろうか。

2004-05-07横山秀夫『半落ち』

横山秀夫『半落ち』

[][][][][]横山秀夫半落ちはてなブックマーク - 横山秀夫『半落ち』 - BookSynapse

ISBN:4062114399

内容

現職警察官が頼まれて妻を殺したと自首してきた。警察は身内の不祥事に慌て、なるべく早く事態を収束させようとする。しかし容疑者は犯行後自首までの2日間、何をしていたか話そうとしない。容疑者がなんとしても守りたかったものとは何なのか、分からないまま仕方なくでっち上げた供述で裁判を進めようとする警察側と、組織に縛られながら真相を知ろうとする男たちの駆け引きの物語。

感想

中高年の義理と人情と意地としがらみの話。登場人物が謎を次々とリレーしていくという構造は分かりやすいので、すっきり読める。しかし、肝心のクライマックスで「血が呼んだ」という論理性無視の書き方をされているのが、良くも悪くもこの作品を端的に表している。つまり理屈ではない親父世代の感動ものを書きたかったのだろう。

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明らかに中高年向きではあるが、高校生くらいから十分読める。基本的にオジさんしか出てこないので、可愛い、かっこいいキャラクターが無しでは読めない層には不向き。一方で出来る職業人は出ずっぱりなので、渋くて有能で葛藤を抱えたオジさんが好み、という向きには良い。

組織と個人的な信条との間で、板挟みになるシチュエーションが基本なので、そういう面倒くさい話が嫌いだと辛い。ただし読み飛ばしても結末に大した影響はないので難易度はそれほど高くない。

ミステリーといっても探偵小説のような派手さはないので、物足りなく感じるかも知れない。また、厳密な論理重視のミステリ好きは、最後で卓袱台をひっくり返したくなるかも知れないので注意。

空白の2日間の謎にポイントを絞って薦めるのが王道。

結果として刑事裁判の過程が分かりやすく読めるので、フィクションだということに注意を促した上で、法曹関係志望者の入門書として、下手な実用書より使える。

人によっては、直木賞がらみのごたごたのエピソードを使うのもいいかも知れない。

外観

表紙は渋い。ターゲットを意識した作り。

反応

割とすらすら読んで返してくる。感動した!という人はあまりいない。たぶん感動の種類が若者向きではないのだろう。

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