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2005-07-31

[]今月の三冊200507 4/34冊 はてなブックマーク - 今月の三冊200507 4/34冊 - BookSynapse

何と再読を除いて全部翻訳小説。めったに読まないので精選してることもあるんだろうけど。ムーミンは8月分にまとめて入れる予定(だけど書けるかどうか自信ない)。(8/17更新)

シオドア・スタージョン『輝く断片』ISBN:4309621864

SF・サイコミステリ短編集。けっこう期待して読みはじめたら最初の「取り替え子」がかなりぬるくて、「こんなものを絶賛するのは誰だ!」と怒りながらも我慢して読み進むと、えっ、とか、おっ、とか思う描写が点々とえさのごとくちりばめられていて、後半4編はもう、次はどんな酷い(←褒めている)話かと口を押さえながら読んだ。この急激な尻上がりのクオリティ乙一の『ZOO』に似ている。

大森望の解説の通り、パターン外の話がパターン通りに収束するので、読み終わったあとは、この手の話はよくあるのになんなんだこの迫力はときつねにつままれた気分になる。細部の描写(バジルソースとか音楽、銀行でのやりとりなど)が過不足なく見事なので、その緻密さに感受性の目盛りをあわせて読んでいくと、ラスト近くの「仕掛け」が驚天動地の激しさで迫ってくるんだろうなぁ。

その人の行動原理を知って、一本補助線を引ければそこにはハッピーエンドもあり得るのに、そんなものはふつう誰も見いだせないので紙一重のところで奈落に落ちる。しかしこういう構図は齟齬の規模が違うだけで、世の中にはけっこうありふれているのかも。

エリザベス・ムーン『くらやみの速さはどれくらい』ISBN:4152086033

自閉症者からみた世界を緻密に描いているところは、見慣れた街を視点を違えて歩いているみたいでそれだけでとても面白い。面白いというのは不謹慎かも知れないけれど、自分とは違った方法で世界を認識している人たちの感覚を疑似体験できるのは、やっぱり面白いとしか表現できない。

しかしこの、違う方法で世界を見るある種の豊かさと、知性を数直線上にとらえた『アルジャーノンに花束を』とを比べるのは無理があるんじゃないのかな。そういう意味でラストがアルジャーノン的な(アメリカ的なと言ってもいいかも)ものになってしまったのはどうにも納得がいかなかった。

海を飛ぶ夢』や『生命観を問いなおす』『いのちの決断』といった生命倫理系の本と絡めて読んだのでよけいそう思ったのかも知れない。フロンティアを求めて止まない、求めることを最終的に肯定するこの感覚は、著者が誰かを想定してあえて書いたものなのか、文化的な背景を持つものなのかが私には判断できなかった。しかし「もともと特別なオンリーワン」に終わらなかったことで、この複雑な読後感が生まれたとすれば、それは著者として必然的なものかもとも思う。

レイモンド・チャンドラー『長いお別れ』ISBN:4150704511

いままでハードボイルドが未知の領域だったので挑戦しました。

マーロウにのぼせかけたところで唐突なキスシーンがあって後は冷静に面白く読めたのは良かったのか悪かったのか。男性同士の友情は素直にファンタジーとして読めるけど、ウェイド夫人といい、ローリング夫人といい、女性の描写は意味不明。いい女って男からはこういう風に見えるんだね…という偏見が。アメリカ社会の背景の知識がないので細かなニュアンスはわかったとは言えないんだけど。

ちんぴらから重鎮までもってまわった言い方をマスターしている世界。いや、実に推敲が行き届いている!ベクトルの違うディズニーランドだ。つまり完璧なエンターテインメント。そしてこっちのベクトルは(ディズニーと違って)嫌いじゃない。あんまり揺すぶられないけど。

ラスト、気がすんだといえばそれまでだけど、それまで必死に色々やったのがこういう形で報われて、やっとあきらめがついたというか、「どうでも良くなるためにここまでやった」っていう気がしてしまう。「するためにする」こととか「無駄だろうけどやるんだよ」的ななにかってあるよなぁ。

岩村暢子『変わる家族 変わる食卓』ISBN:4326652780

再読。

食生活でダメ人間になりかけたとき*1に読む思考矯正本として使ってるんだけど、読めば読むほど心当たりがあって、ぎくっ、ぎくっとしっぱなし。

作るかどうかは気分…安定して炊事できない。気分が乗ったときだけ手の込んだ物を作る

手作りする私、指向…たまに実用的でない手作りをレジャーとして楽しむだけ

こんな事は無理、できない…揚げ物や魚の三枚おろし、やってできないことはないのに最初からあきらめる

私流アレンジ…スタンダードな味ではまず作らない。作るたびに変化をつけるので「いつものあの味」がない

ゼロリセットの快感…何でもいいから冷蔵庫にある食材を使い切りたい

無理しないマイモラル・ストレスに弱い…無理して続かないくらいなら手を抜く

自己愛型情報収集…都合のいい情報だけ参考にする(ココアは健康によい…実は甘い物が好きなだけ、とか)参考→「inside out「自分を正当化してくれるもの」を好む」http://www.hirax.net/diaryweb/2005/08/13.html#200508133

アリバイ健康志向=免罪フード…豆腐など健康にいいと言われている物でつじつまを合わせようとする

言ってることとやってることは別…執拗な聞き取り調査で明らかになる、本人も意識しない嘘!(参考→「消費者は嘘をつく - 世の中不思議で面白い」http://blogs.yahoo.co.jp/hbikimoon/7933287.html

正解主義…こうあるべき=言ってること=家庭科で習ったこと・世間で言われていること=でもやってない

効率主義…無駄なことはしない。子どもが食べないものは作らない、など。

最悪想定次悪選択…子どもが朝飯を食べない、食べないで学校へ行くよりはお菓子でも食べた方がまし

とくに、栄養さえとれれば相性は二の次で何でも入れる「配合飼料型メニュー」はまさにそのものでぎくっとする。そして「単品羅列」=1食材1メニュー(トマト、冷や奴、ご飯、温泉卵みたいなメニュー)。

さらに栄養素を何種類かの食材に代表させてそれだけ繰り返し食べるなんて今の傾向そのもので、わーすみませんごめんなさい。

しかし読むたびに、私だけじゃないんだーと安心しているところもあったりするので諸刃の剣です。

関連

その他の読了本感想

緑陰クリップ / r.読了…http://b.hatena.ne.jp/Hebi/r%2e%e8%aa%ad%e4%ba%86/

ブックマークのコレクション機能で一行感想つけてます。画像をばーっとならべて見ると最近偏ってんなーと反省できるので便利。

*1:こういうときはたいてい生活全般においてダメ

2005-06-30

[]今月の三冊200506 4/21冊 はてなブックマーク - 今月の三冊200506 4/21冊 - BookSynapse

ブックマークのコレクション機能を使い始めてから1行感想の窮屈さを実感してるのでつい長くなるなぁ…(7/22更新)

中村元水族館の通になる』ISBN:4396110103

水族館の舞台裏について、知りたいことが過不足なく書かれていて、とてもいい本。今までひたすら見た目を求めて水族館に通い詰めてきた私の目からウロコがぼろぼろ落ちた。

東海大学付属水族館にあったリュウグウノツカイは国内唯一*1とか、鳥羽水族館のイロワケイルカアメリカに横取りされないように大変な努力をして手に入れたもの*2だとか、ウミヘビは地上でも生活できる!とか、はじめて知ったことも多い。廉価な新書一冊でこの情報量はかなりお得。

飼育係としての自負とストイックさと、サービス業としての謙虚さ、客の立場に立った語り口、上品で親しみやすいユーモアが溶けあった得難い語り口。すばらしい。

貴戸理恵/常野雄次郎『不登校、選んだわけじゃないんだせ!』ISBN:4652078072

よみながら何とも言えずにもやもやしたのは、かつて自分が我慢に我慢を重ねて学校に適応して何とか通いきったという思いがあるからだと思う。そのうち、不登校フェミニズムひきこもりが重なって、これは不登校固有の話じゃなくて、あらゆるコンプレックス(それは社会的に見て影響が大きい小さいに関わらず、自分にとってどれだけ大きいか)の問題なんだと気づく。

多かれ少なかれ、すべての人が今の自分を「選んだわけじゃないんだぜ!」と思っているだろう。それは自己責任への異議申し立てであり、でもだからこそ、「自分で選んでこうなったんだよ」と言うことができる人の目的意識の持ち方や克己の精神にあこがれて、望ましいことと思って、これから社会へと出て行く子どもたちに提示しようとする。それは自分たちがこれから、「なりたい自分」になる努力が出来ますように、という願いであり、祈りであるのだろうと思う。

でも一方で今の社会に必要なのは、『14歳の子を持つ親たちへ』に指摘があったように「何を選び、どんな結果になっても、その人自身は社会のどこか一場面では愛され、受容されなければならない」という認識だろう。

グレッグ・クライツァー『デブの帝国』ISBN:490178420X

ずっと気になっていた「貧富の差による体格の差」以外にも、人々の意識や身体を変えていく要素が、世の中に充ち満ちていることを思い知らされる。経済のために健康が犠牲にされ、また経済的な理由から健康が推奨される…結局金かよ!

糾弾調が過ぎて、ちょっと健康ファシズム(『健康帝国ナチス』)みたいなところもないわけじゃないけれど、その背景には食欲というものを罪悪視するキリスト教的な考え方も色濃くあるうえに、各団体の圧力で地方政治が綱引きされる感じも、じつにアメリカらしいなぁと思った。地方分権が徹底すれば日本もこんな風になるんだろうか。

日本にも給食を民営化しようとか、学校自体をもっと経済的な視点から組み替えようという動きがある一方で、栄養教諭を導入したり、食育基本法なんかの食育に取り組む動きもあって、もう少し違う力学で綱引き中の模様。

三好春樹『元気が出る介護術』ISBN:4007000107

「八〇すぎたら生き仏」被介護者の生活習慣や性格を変えようとするなとか、やたらと訓練したがる人は自分の負った障害と向き合わず、生活意欲に結びついていかないとか、色々身につまされる話が多い。

糖尿なのに甘い物が好きで隠れてまんじゅう食べるおばあちゃんには、厳しく監視するんじゃなくて「美味しそうだなぁ」といって半分もらって食べる量減らすとか、介護介護力でなく介護関係というのを納得させられる例。家族は元気なときのことが頭にあるから悪いところばっかり見てしまう、というくだりになぐさめられる。

まあ、子どもを否定しないで受け入れることを(女性に限らず)母性とよぼう、とか、介護の最後の仕事は老人の求める母性に応えることとか、ちょっとどうかと思う部分もあるけど、確かに気持ちが明るくなった。子ども育てるわけじゃないんだから、お互い適度に力抜いていけばいいんだ。


次点

  • 堀江敏幸『河岸忘日抄』ISBN:4104471038
    • ゆっくりとたゆたうような文章自体が少しずつ読むことを要請する構造。重なり合うモチーフ、意図的に反芻されるエピソード、同じような平板な日々に見えてそうではない、川の流れのような時間。最後の種明かしは全然重要じゃない気がする。ホメオスタシス小説って言ったら怒られるだろうけど、そういう読み方をしてしまった。
  • 内田樹名越康文『14歳の子を持つ親たちへ』ISBN:4106101122
    • 冒頭の「女性が子どもを産みたがらないのは、育った子どもがワケのわかんない子どもになりそうで怖いからだ」という一言で図星を指されて「居着いて」しまった。あとは、はあ、はあ、と聴くばかり。

子どもを自分の望む方向に合致するところでしか認められない母親ばっかりで異常って言うけど、そうじゃない育て方をしてまともな社会人にするのは大変だろうなぁと思う。

*1:そうと知っていたらもうちょっと真面目に見たのに

*2:確かにとても魅力的なフォルムだった

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