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2006-05-15

よつばと!』5巻の進化 はてなブックマーク - 『よつばと!』5巻の進化 - BookSynapse

よつばと!』においては何をもって「ねたがわれた」と判断すべきかよくわかりませんが、5巻未読で今後読むつもりがある人は、以下は読まないほうがいいです。

よつばと! (5) (電撃コミックス (C102-5))

よつばと! (5) (電撃コミックス (C102-5))


あれ、なんかちょっとあっさりしたかなぁというのが最初の感想*1で、1巻から読み直し始めたところで気がついた。説明的な表現がかなり減っている。

最初のころには頻繁に見られた汗マークは数自体が減って、頭の上にくっきりとじゃなくて、顔にさりげなく描かれるようになっているし、状況や心中を説明する四角く囲われたナレーション(2話の「カギしまってる→つまり中にいる→でも返事がない」とか、11話の「おこられるかもしれない」「きえない」とか)も減って、今回は一つもない。

よつばの行動に対してのリアクションのコマも減っている(107pゴミ箱にはまるとか167p浮き輪が引っかかるとか)。恵那との吊り輪のシーンでもほかの二人はコマからはずれているし、よつばに限らず、風香にたいする「これくらいでお姉さんぶられてもな」「気の早いねーちゃんだな」というつっこみへの風香の反応もない。12話のプールでの風香のキレっぷりと比べるとかなり割愛してある。ついに登場したヤンダとよつばのやりとりに対する、とーちゃんの反応もほとんどなくて、わずか「子供がふたり」という手書きの文字があるのみ。

描きたいエピソードとページ数の都合もあるだろうけど、全体的にリアクションや説明が省かれている。読んでいて、あれもう次のシーン?と感じたところ(p94金星発見とか103p「ちきゅう」とか)もいくつかあった。


これがどういうことかというと、出来事にたいする説明(今おこったことをどう考えてどう反応すべきことか)をしなくても、読者はわかる、もしくは読者にゆだねる、と判断される領域が以前より広がっているということになる。これは笑い所を観客に説明するようなテレビのキャプションとは正反対のベクトルで、じつにさりげなく行間(コマ間?)を読むことをうながしている。

作中では小岩井家が引っ越してきて1ヶ月あまり、登場人物もお互い気心が知れてきて、ちょっとやそっとでは驚いたり焦ったりしなくなってきたことを表してもいるのだろう。けれど一番なじんできているのはたぶん読者なのだ。なにしろ『よつばと!』は3年にもわたって描かれてきていて、もう5巻目にもなる。

ぶどういっぱいたべたー」といわれたり、争う声にあせって飛び込んだらヤンダがいたとき、よつばの鯛焼きアンケートを見守るとき、とーちゃんの表情は描かれていない。描かれていないけれど、5巻まで読んできた読者には想像可能だし、もっと言えばそこを読んでいるときの私の顔に、それはちゃんと浮かんでいたと思う。

最初のころはそこで演じられるドラマを観客としてみていた読者は、いつしか作中に入り込み、よつばを取り巻く誰かの視点から笑ったり怒ったりあきれたりつっこんだりしながら見守っている。(それは5巻の表紙にも表れていて、くわしくはインターネット殺人事件 ◆『よつばと!(5)』の表紙は芸術を参照のこと)


もともと洗練された漫画文法を駆使していた(たとえばヒゲのある生活:よつばと問題を見よ!)『よつばと!』だけれども、その表現はマンネリどころか、より内容にふさわしいものへと工夫が重ねられている。おわらない夏のおわり、それでも変わらないよつばの日常をこれからも描き続ける『よつばと!』は進化しつづけているのだなぁと感慨深い。



蛇足

とーちゃんが最初いかないといっていた海へ、一転して行こうと決めるシーン。玄関のよつばを見下ろして(身長差に加え、上がりかまちの高さも加わったその高低差がすなわち二人のへだたりの大きさ)「行かねーって」「行かない」「行きません」とけんもほろろにあしらっていたところから、腰かけて視線がよつばの位置まで下がり、泣いているよつばごしに「今日は暑いなぁー」と夏の終わりの青空を見上げて心変わりする視線の変化とタイミングが何とも巧み。


あと、カバーをとるとよつばがいないので思わず泣きそうになったけれど、しばらくしてこれは本の見返しから目次ページへ(さらには裏表紙の下へ)とよつばが走っていったと思えばいいのか、とほっと安心。

しかし何度読んでも新たな発見があって飽きないなぁ…。


よつばと!書評など

緑陰クリップ > [よつばと!]

*1はてなISBNページやアマゾンで感想をあさったらおとなしめと感じた人が他にも何人かいたみたい

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