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2005-05-31

[]今月の三冊200505 5/19冊 はてなブックマーク - 今月の三冊200505 5/19冊 - BookSynapse

はてなブックマークサブアカウントに翻弄されて実に1ヶ月半遅れで更新。さすがに寝かせすぎて良くない。やっぱり半月後くらいがひと月分平等に評価できる気がする。(7.16更新)

堀江敏幸『回送電車』ISBN:4120031454

滋味豊か。ゆっくりゆっくり読んだけど、気持ちのいい断片が目の奥にしみている。

ソプラノリコーダー」みたいに、郷愁を誘われて栗コーダーカルテットが聴きたくなるのもあれば、「アクセラレータ」みたいにああパソコンを使う同時代の人なんだ*1と再認識するものもある。「スーパーマリオ2」なんていう単語にびっくりしたりも。縄跳びをする少女を描いた「オレンジを踊れ」の視線はちょっと危うくて、でも共感を誘うし、「ガンゴール(段ボール)」の男の子もかわいい。何より登場する人たちがみんな一癖もふた癖もある庶民なのが慕わしい。


黒田恭史『豚のPちゃんと32人の小学生―命の授業900日』ISBN:4623038335

出版ダイジェストの紹介を読んで興味を持ち、アマゾンでの激烈な酷評「やるべきではないトライ&エラー」を読んで、ますます興味がわいて読んだ。何とも名状しがたい一冊。

先生と生徒が対等な立場で話し合うことが目的だったとすれば、その結末は目的を達していないし、食べることで命の尊さを学ぶんだったら、生徒に話し合いで選ばせようとしたのは間違っている。

しかし、「そんなのは教育じゃない」と言われると、これが教育でなくてなんだ、という気持ちにもなる。確かに生徒たちを教え導く教師として、黒田先生はあまりにも迷いすぎているし、そのせいで結果的に生徒には酷な状況へと追いつめてしまったのは事実だろう。しかしこれはよく計画されコントロールされた学校教育ではないかもしれないけれど、新米教師の黒田先生が一人の人間として、生徒たちや教育という仕事そのものに向き合った貴重な軌跡だと思う。むしろ、生徒たちよりも先生がこの経験を通して多くのことを学んだのじゃないだろうか。

この通りのことを全国でやることはできないだろうし、やる必要はないだろうけれど、教職を目指す人には「教育とは何か」を考える上でぜひ読んで欲しい本。


玄田有史『14歳からの仕事道』ISBN:4652078064

とにかく自分に正直で、子どもに誠実で、いい本なんだけど、結論を出してはくれないのでストレスがたまる。出口を求めてもがく過程でこの本を掴んだ人は、淡々と出口がないことを説かれて途方に暮れるだろうなぁ…。

唯一具体的なのは、大人に真剣に話を聴きましょう、ってことだけなんだけど、その動機をあたえるだけのことはどこにも書いてないような気がする。それなのにただ大人の側から、「答えはどこにもないからあげられないけど、とにかく話は真剣に聴くし、君の質問にも答えてあげるから、まず働きかけようよ(働きかけてよ)」っていってるようにしか思えない。

そして結論は「ちゃんといいかげんに生きる」こと。これが14歳にわかっちゃったらそれもそれで怖い気がするけど。自分にあった「いいかげんさ」ってやりすぎたり、さぼりすぎたりする試行錯誤でわかってくるものだからなぁ。

特筆すべきは「学校をやめた人へ」の章があること。ニートをふまえてるんだろうけど、たしかに中退者に対する就職援助はあまりにも手薄。とにかく人との関わりを持ち続けないと断絶したら回復が難しいっていうのはひきこもりへの予防線だろう。学校やめても生活習慣は保とうってそりゃ無理な注文だと思うけど…。経験上、一回とことん乱れてみるのも、その不快さを記憶して自分を戒める意味では有効かもと思う。

印象的だったのは仕事に関して述べた以下の部分。

ワケわからんから、行動できない、というのは正しい理屈です。論理的には、正しい。正しすぎる。ちゃんとした知識や理解にもとづいて行動したい。納得したい。けど、そんなことってほとんどないんだよなぁ。

言いたいことはわかる(とにかく簡単にあきらめるな、よくわからないところに踏みとどまって粘れってことね)けど、ここでけなげな人が頑張っちゃうから、世の中からわけのわからない事が減らないんじゃあないのか。


高橋美津子『娘を留学させてはいけない』ISBN:4753924386

どこかで*2で「留学に関するマイナス情報は流布されない」というのを読んで以来、発見したら絶対読もうと思っていた留学のデメリット指摘本。

なんで「娘」なんだ*3とか、文章が平板で、取材源が明らかでないとか、素人臭い本の作りだとか(実際自費出版系の会社みたい)いろいろ気になるけど、まあ、事の本質は押さえている感じ。

ちょっと考えれば、ホストファミリーに当たりはずれはあるだろうし、年頃が同じ子どもがいればもめるだろうし、言葉になまりはあるだろうし、日常会話と学校言葉は違うだろうし…。加えてアメリカ特有の文化や、差別や偏見。つらい目に遭うのも勉強のうちと思えば思えないこともないかも(ちょっと無理がある?)。

結婚詐欺とか窃盗とかは日本だって絶対ないとは言えないから確率の問題だけど、問題なのは国際結婚を嘆く親。これはもうどうしようもない。孫と日本語で会話したかったって言ったってそりゃあ無理ってもんでしょう…。

本当の話かどうかはおいといて、いろんなケースを想定するためには有効な本だと思う。特に最初の「大学にはいるために語学学校へ行ったけど、ただでさえわかんないことを英語の授業されてもわかんない!」っていうのはよくありそうで恐ろしい。

村上龍『どこにでもある場所とどこにもいないわたし』ISBN:4163217703と併読したので、よけい感慨深かった。「海外へ行くことが唯一の希望であるような人たち」の物語。


深見填『子どものためのドラッグ大全』ISBN:4652078080

ダメ、絶対。では解決しない。何もかも知らしめることで必ず被害を最小限に食い止められる、というのが基本理念。ダメだと言えばやりたくなる、だから、包み隠さずすべてを知らせて、リスクとメリットを考え合わせて冷静な判断をしてもらおうということ。

どのくらい子どもが薬物の危険にさらされているかまったく知らないけど、おそらく地域差が相当ありそう。きっと大学生や社会人になってから思い出してもらいたい場面が発生するのだろう。

LSDの効果を、共感覚だと解説されたのはわかりやすい。そして合法ドラッグ煙草・酒)と違法ドラッグの境目がいかにあやふやなものであるかもよくわかった。

依存と中毒の違いもわかりやすい。中毒は単にやめれば症状が止んで回復するもの、依存はやめるといらいらしたり、どうしてもやりたくなったりするもの。活字中毒はだから、本来は活字依存と呼ぶべきなのだった。

また、薬物依存の患者に、別のもっと害のないものに置き換えて依存させるのが、障害のある人に車いすを与えるのに例えているのも違和感がある一方で何となくわかるような気もした。どうしてもやめられないなら、もっと害のないものにしたほうがいいという考え方はありかもと思う。

違法ドラッグそのものを完全に断ち切るには、そのドラッグが与えてくれる快楽を上回る、人生の目標を見つけ、それが薬の占めていた位置に新たに置き換わらなければならない。それが何であるのかを時間をかけて見いだしていくのには、今度は、精神科医ではなく、前述のカウンセラーと呼ばれる人たちのもとを訪れ、彼らとともに、新たな旅(トリップ)を歩んでゆく必要がでてくるだろう。

p137

これは薬物依存にかかわらず、自分や他人の望まない、不幸な依存状態にある人たちみんなにとっての課題だろう。そういう意味では薬物依存は別に特別な問題ではない。およそこの世の中にあって悩みを抱えるすべての人たちにとって、同じ問題が人生における最大の課題だ。



次点

  • 北村薫『続 詩歌の待ち伏せ』ISBN:4163668500
    • この人の本を読むと自分がいかに言葉を疎略に扱っているか思い知らされる。そして謙虚なこと。知っている人ほど自分が何を知らないかを知っている。
  • 村上龍半島を出よ』上下 ISBN:434400759XISBN:4344007603
    • どうせやるとなったら、とことん真剣に北朝鮮工作員の目から見た福岡市民を描写するところが村上龍のえらいところ。評論家と違ってありとあらゆる視点から現実を切り取って、矛盾する主張をぶつけてみせる小説家って強かだよなぁと思う。
  • あさのあつこバッテリーVI』ISBN:4774606367
    • 待ちに待った最終巻、のはずが煮え切らず。期待がクオリティを追い抜く一点が、何冊かまえにあった気がする。このところのあさのあつこの新刊ラインナップを見ていると、作者のなかで書く上でのテーマがうつりかわってしまったんだということがよくわかる。こういう話は結末は実はどうでもいいのかもしれないと思った。
  • 吉田直トリニティ・ブラッド Canon 神学大全』ISBN:404418416X
    • 作者逝去の後、遺稿と未完のプロットと設定のすべてを納めた一冊。まるっきり『ぼくの地球を守って』な火星プロットにぶっ飛ぶやら、あのおちゃらけたアベルのひねくれかえった過去が読みたかったと惜しむやら。軟弱教皇の一世一代の見せ場とかカテリーナさんの嫉妬とかアベルとカインの会話は読んでみたかったですよ。アニメはどこまでやるのかなぁ…。

*1:現代人なのに古びた空気を感じさせる文章なので

*2:多分『反社会学入門』だったと思う

*3:実際は男女ともに事例は収録されている

2005-05-26

[][]bookグループに関わる要望 はてなブックマーク - [[bookグループに関わる要望]] - BookSynapse

はてなアイデアで、bookグループもしくははてなグループ全体に関わる要望を見つけた時に、bookグループで共有し、ベットを募るためのキーワードです。

メンバーなら必ずベットしろとか、何が何でも1000あいぽんを目指すぞ、という趣旨ではなく、こんなの有りましたけど、趣旨にご賛同される方は良かったらベットしてください、くらいの扱いでよろしくお願いします。多分ポイントの多寡より、賛同者が多い方がスタッフへのアピールにはなるんじゃないかと思います。

適宜修正追加お願いします。

2005-05-18

[]今月の三冊200504 3/13冊 はてなブックマーク - 今月の三冊200504 3/13冊 - BookSynapse

前半はひたすら住環境整備に没頭、読了数が少ない。その割には当たりが多かった。(5.18更新)

村上宣寛『「心理テスト」はウソでした。 受けたみんなが馬鹿を見た』ISBN:4822244466

血液型占いはもちろん、心理テストもうさんくさく感じていたので、会心の一冊。「あなた自身も、周りの人も知らない、本当のあなた」なんてものはそもそも証明しようがないし、誰にもわからないんだったら診断する意味ないよね?という身も蓋もないわりきりが爽快。ロールシャッハテストで、「確実にわかるのは診断者のことだけ」ってくだりに爆笑。そりゃそうだ。

大変気持ちよく読み終えたけれど、著者が展開する統計学的な証明を理解したとはとてもいえない。根拠を理解していないという意味では、この手のものを信じている人も、私みたいな虫が好かなくて信じない人も同じである、ということを自覚しないと、変な穴にはまりそう。

関連

  • 村上宣寛のホームページhttp://psycho01.edu.toyama-u.ac.jp/
    • 著者自ら「ふつうの売れ方ではない」って(笑)書評リンクも少し
  • 今までは血液型信者に松田薫『「血液型と性格」の社会史』を紹介していやがられてたんだけど、より読みやすい本が出て嬉しい。

ブルボン小林ジュ・ゲーム・モア・ノン・プリュ―自腹文庫ISBN:4872339215

本を読むのがやめられないのは、「自分が実際に見たり聞いたりしただけでは感じ取れないものを伝えてくれるから」だと改めて思った一冊。テレビゲームは「子どもの頃兄弟がやるのを後ろで見ていた」くらいの知識しかないのに、「あるある」とか「なるほど」と思わせてくれる。

一番芯の、一番おいしい「ゲームとは何か」「何が面白いのか」ということを読みやすく、共感を誘いながら展開してくれるこの筆力、観察力、思考力。ほんとなら何十本、何百時間を費やしてゲーム経験値を上げた人でないとたどり着けない境地に、すとんと着地させてもらえるこの贅沢。「ゲームなんて、何が面白いのかわかんないよ」という人にこそ読んで欲しい。

同著者のゲームがらみの小説『パラレル』はこっちを読んでからの方が面白いかもしれない。

関連

松村栄子『雨にもまけず粗茶一服』ISBN:4838714491

これまた茶道という、端から見てたら「そんな青汁みたいの美味しい?」とか「足しびれない?」とか「こんな汚い茶碗が何百万!?」とか思ってしまう世界を、家元の長男の家出と絡めてユーモアたっぷりに描いた佳作。

いい加減な長男、しっかり者の次男、忠義もののじいやに男勝りの女内弟子…キャラが立ってて、結構はちゃめちゃなストーリー展開にもかかわらず、お茶の世界の面白さ、ゆかしさがちゃんと伝わってきて、一度くらいは茶席にいってみたいとつい思わされてしまう。

亡くなった魚屋さんの遺品のエピソードとか、京の本家の夭折した跡継ぎを巡るどんでん返しは実にお見事。

少年の成長物語を伝統文化と絡めるあたり、松村栄子はちょっと長野まゆみみたいなルートをたどっているような気がする。


次点


柳田邦男キャッシュカードがあぶない』ISBN:4163667202

読了後、ATMでつい後ろを確認したり、天井をチェックするようになってしまった、が、その後『半島を出よ』を読んで「貯金なんてしたってどうせ…」みたいな気分になってしまったり。影響されすぎ。

内田春菊『ファザー・ファッカー』ISBN:4167267047

あらすじだけ知ってて、読んだような気になってたのを反省。「アフガン零年」を見終えた時と同じような怒りと諦念と哀しみと。特によその家のお父さんも自分の家のお父様と同じだと思いこんで、よその家族の気のきかなさに気をもんだり、突飛な行動を取ってしまうくだりがあまりにも悲しい。

堀江敏幸『いつか王子駅で』ISBN:4104471011

競馬に全然興味がないので、何でみんなあんなカタカナだらけの馬の名前を、家系までばっちり覚えているのか不思議でしょうがないんだけど、競馬ファンのメンタリティをかいま見ることが出来る。馬への思い入れたっぷりの文章が寺山修司を連想させるものの、あれほど「馬馬馬馬…」って感じじゃなくて、読んでいるうちに何の話だったか忘れるくらいのあんばいが心地よい。

クライマックスは女の子が全力疾走するのを馬にたとえるという、そこだけ読んだら噴飯ものの展開なんだけど、そこに至るまでに描かれる馬と、人と、街の描写とが、それを自然に神々しい高揚感に感じさせてくれる。咲ちゃんみたいな娘が欲しい。

穂村弘『現実入門 ほんとにみんなこんなことを?』 ISBN:4334974775

滝本竜彦の『超人計画』みたい*1でした。ここまで露骨に演出はいるとちょっと覚めてしまう。書き手も読み手も慣れてしまって緊張感がない。よくいうと芸が確立してしまったかんじ。贅沢ななやみ。

ポプラビーチの連載「天国さがし」も同系統。http://www.webpoplar.com/tengoku/tengoku.html

*1:違うのは彼女がいるかいないかってとこだけ

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