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2004-12-302004年12月のベスト
■ [best]今月の三冊 4/22 
またも半月遅れ(05/1/12)の更新。年間ベストはまた後ほど…。
森達也『世界が完全に思考停止する前に』ISBN:4048839004
この人のバランス感覚には励まされる。決して安易に結論を出さないその態度に苛立つこともある。そして、それでも自分で考えることをやめてはいけないと思わされる。
「オウムによってオウム化した*1」日本で、異なる他者との共存をあきらめないで生きていくために、ぜひ多くの人に読んで欲しい一冊。
森達也『「A」撮影日誌』ISBN:4768476872/『A2』ISBN:4768476821
肝心の映画を見てないんだけど、『A 撮影日誌』はこれだけでもすごい傑作。半分成り行きで社会と、異物と見なされた宗教団体の軋轢の場に飛び込んでしまった著者の「鈍さ」故のねばり強さと、それがつかみ取るものの普遍性にラストで涙ぐむ。マスコミも警察も住民も自分たちの「居場所」のために必死なのだ。オウムを「居場所」と考えた人が同じだけ必死にならないわけがない。そのせめぎ合う場所で、どんな人であっても、人である以上は何らかのコミュニケーションが可能で、そうである以上そこには笑いもあれば、共感も可能であるということをやってみせる、この説得力といったら。
『A2』はむしろ『「A」撮影日誌』の裏打ちとして。
吉田修一『ランドマーク』ISBN:4062124823
もともと計算高い作家である上に、なんか最近は通俗小説擬態がいきすぎて*2、どこ行っちゃうのと思ってたら、路線は変えずに堅めに巧く組み上げてきたという感じ。小説の構造とスパイラルタワーの比喩とか、あいかわらず仕掛けが巧すぎて、やりすぎなんではと思いつつ感心してしまう。軟弱路線も汗くさい路線ももういいのでこの調子で冷酷な方向に突っ走って頂きたい。
岡野宏文×豊崎由美『百年の誤読』ISBN:483560962X
ダ・ヴィンチ連載時から単行本化を楽しみにしていた企画。作品の一部分を取り上げてただ笑うだけなら誰でもできるだろうけど、ちゃんとここがいい、ここが笑える、ここがダメ、と具体的かつ、作品全体・文学史ともに視野に入れて褒めたりけなしたりするところがえらい。芸も愛もある文学漫才。割と趣味が近い*3から頷きながら読めるってところもあるんだけど。『文学賞メッタ斬り!』といい、2004年はトヨザキ社長の年だったなぁ。ここまで来たらもはや「オヤヂ」どもも足引っ張れまい。
朝日新聞の書評欄(http://book.asahi.com/review/index.php?info=d&no=7373)でべた褒めされて一気に知名度が上がったもよう。
次点
『日本一怖いブック・オブ・ザ・イヤー2005』ISBN:4860520459
作家のインタビューはどうでもいい*4んですが、斎藤美奈子×高橋源一郎はいいコンビですね。「対称性」談義が牽強付会だけど掛け合いが面白い。
北上次郎と大森望のコンビは、お互いの得意分野で相手のレベルに合わせて手加減とかしてるのがかわいらしい。あと北上次郎の「恩田陸と伊坂幸太郎は次が楽しみな点で似ている」説に賛同します*5。よく言えば永遠の注目株、悪く言えばどれを読んでも食い足りない。
大森望の『電車男』評はびっくり。それ「恋愛小説」じゃないじゃん、「2ちゃんに生息するオタク観察本」じゃん。それを「恋愛小説」とかあおって世に知らしめるなんて大森さんは邪悪だなぁ…。
藤原帰一と山形浩生×稲葉振一郎は素直に勉強になります。ロッククライミングの最初の出っ張り。
永江朗『恥ずかしい読書』ISBN:4591083888
本のカバー話など本に関する話ばっかりでまるごと一冊。つるつるとそうめんでも食べてるようなこの読み心地はすごいなぁ。本が好きな人なら楽しく読めます。このタイトルは誤解を招くと思うけど。