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2004-05-15伊坂幸太郎『重力ピエロ』

伊坂幸太郎『重力ピエロ』

[][]伊坂幸太郎『重力ピエロ』 はてなブックマーク - 伊坂幸太郎『重力ピエロ』 - BookSynapse

ISBN:4104596019

内容

巷を騒がす連続放火事件。そのルールを見つけたという弟、春にのせられて、兄である泉水、そして入院中の父は次第に謎解きの深みにはまる。周囲にちらつく正体不明の美人、探偵…事態は思わぬ方向に。お互いに全く知らないまま、兄弟は同じ目的を持ち、そして復讐は果たされる。DNAと過去の呪縛を突破する「家族」の物語。

「本当に深刻なことは陽気に伝えるべきなんだよ」


感想

非常に工夫して書いているのがそのまま見えてしまうので、逆にこちらが冷静になってしまう。比喩やエピソードの特徴付け方が鼻につく感じは否めない。それが何かの仕掛けになっているのかと思えば、そうでもないので、もっと意表をつく展開を期待して読んでいくと、肩すかしを食らった気分になってしまう。意表をつかれたのは夏子さん=郷田順子コノハナサクヤビメくらい。遺伝子関連は高校レベルの知識があればさほど驚くような仕掛けはないし。

一番もったいないのは、二人の兄弟のどちらかに焦点を絞ることを選ばなかったがために、意外性を完全に犠牲にしているところ。隠し事をする語り手隠し事をする依頼者がダブルで縛りになってしまっているので、話をわかるように持って行こうとすると、なんだか見え見えのほのめかししか残らなかったんじゃないかと。その混迷を書きたかった感じもなくはないんだけど。放火予測地点に消火器じゃなくてペット持ってくあたりや橋の上で謎の青年に会うところなんかは、とても不自然でもったいない。探偵も魅力的なキャラクターなのでもう少し活躍させてあげたかった。

ところで春の「性的なるもの」への嫌悪はその後どうなっただろうか。やっぱり進む船の甲板の上で反対側に歩き続けるのだろうか。

外観

天童荒太路線。もしくは片山恭一路線。現代美術のオブジェ風の写真なのでスマートだけれども、いまいち訴求力は低い。(たぶん対象年齢層が学生から20代前半)

帯は当初担当編集者によるもので、おいおいと思ったものだったが、ちょっと後のこれもそれを引きずっている。

未知の感動がここにある!

小説はまだまだ進化する!

この興奮を、あなたに!!

興奮しているのは担当者の方かも。

後日こんな記事も。http://d.hatena.ne.jp/nao3307/20040611#p6

宣伝

遺伝子関連や動物生態学まわりは、一見の読者にとってちょうどおもしろいところをピックアップして書いてあるので、理系を志し始めた向きにはいいかもしれない。エンタティメントで知的好奇心も刺激。そして大前提として基調が正の方向に振れているので後味がよくて、割と誰にでも薦めやすい。いい感じの「父親像」、強い絆で結ばれた「兄弟もの」としても。

関連

  • 家族小説…「新しい」家族小説というと、どうしても舞城王太郎の『煙か土か食い物』ISBN:4061821725が連想されてしまって、そこからするとちょっとこの兄弟は生々しさが足りない。まあそのぶん万人向けともいえる。(さすがによく知らない人にいきなり舞城王太郎は薦めにくい)
  • リチャード・ドーキンス『利己的な遺伝子』ISBN:4314005564…眉につばをつけながら読むとちょうどいい。結果的にこうなってますよという、おもしろい「解釈・ものの見方」の本なのに「真理」と思われてしまうのが悲劇のはじまり。これを意図的に拡大解釈すると、竹内久美子のトンデモ系なんちゃって科学芸になる。
  • 『ヒトに最も近い類人猿ボノボ』ISBN:4484003112…これほしいなぁ。
  • ジーン・アウル『大地の子エイラ』シリーズISBN:4566021122~…ネアンデルタール人とクロマニョン人と聞くとまずこれが出てきてしまう。ネアンデルタール人に拾われたクロマニョン人の少女の『醜いアヒルの子』みたいな話。
  • 板谷利加子『御直披』ISBN:4043536011…「魂の殺人」レイプに関して一番わかりやすかった本。
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