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2004-05-09小野不由美『くらのかみ』
■ [分類][913.6][楽]小野不由美『くらのかみ』
編集者宇山日出臣氏の企画による講談社「かつて子どもだったあなたと少年少女のための ミステリーランド」の第1回配本。
内容
本家の跡継ぎを決めるために山の中の旧家に集まった親戚一同とその子どもたち。四人で部屋の隅を回る「四人ゲーム」が「できない」ことを確かめようと試したところ、4人しかいなかったのはずの子どもが5人になっていた。一体誰が5人目なのか…。その後も怪異はとどまるところを知らず、食事に毒草が入っていたり、人魂が現れたり、次々と起こる問題に子どもたちは立ち上がった。
感想
出だしからして秀逸。「四人ゲーム」がなぜ不可能なのか、頭の中に四角い部屋を思い浮かべて、その中で人を動かしてみると、ふだん使っていない部分に血が通ってエンジンがかかる。
タイトルになっている「くらのかみ」はむしろおまけで、中身は子どもたちの少年探偵団が大活躍。これを子どもの頃読んだら盛り上がっただろうなぁ。理路整然とした行動力がたまらない。10~12歳の子どもというのは大人が想像するよりずっと聡いし何でも出来る。
増えた子供は誰か、ドクゼリを入れたのは誰かというふたつの謎を両方とも合理的に解決するのかと思っていたら、「くらのかみ」という超現実的なものをそのまま受け入れることで、ドクゼリ事件の合理的な解決に結びつけるという驚きの展開。
夢は壊さず謎は解くというこの塩梅が巧い。
小野作品は最後に世界を破壊して終わるパターンが多いので心配していたら、この作品に限ってはその破壊がいい方に決着していて後味も良かった。
外観
凝った装丁。丸いのぞき穴が開いた箱に、どちらからでも入れられるようになっているので、二通りの外観*1が楽しめる。が、この箱どうしよう。またしても装備の悩みが。
村上勉の挿絵がすばらしい。したたるような夏の緑が匂い立つよう。何を考えているのかよく分からない人物の味も作品と合っている。ただ、挿絵のタイミングが早すぎて、読む前に先が分かってしまうのは、もう少しやりようがあったんじゃないかと思えてならない。
宣伝
十二国記が出ずっぱりで需要は常にあるので、問題なし。今まで小野主上の一冊完結の単行本はやたら厚かったり(『屍鬼』)怖すぎたり(『黒祠の島』)して薦めにくかったので、手頃なのが出て嬉しい。
子どもが主役だと渋る向きには、小野作品特有の青年(常とか静信とか、ここでは三郎)も登場することを忘れずアピール。値段がちょっと高いけど。
反応
「これ十二国記の人ですかー?」そうですよ(にこにこ)。
関連
- 柳田国男『遠野物語』ISBN:4101047049…ざしきわらしといったらこれ。定番。
- 植松黎『毒草を食べてみた』ISBN:4166600990…数ある毒草ものの中でもこれは面白そう。ドクゼリが載っているかどうかは分からない。
- 京極夏彦『姑獲鳥の夏』…行者殺し関連でなるほど、と思ったのはこの本が最初だった。
- 長野まゆみ『雨更紗』ISBN:4309405975…田舎の旧家と少年たち、沼、鬼火、死者の呪い…同じような設定でもこれだけ違った世界が立ち上がるという例。小野不由美『過ぎる十七の春』ISBN:4062552019と読み比べると面白い。
- 佐藤さとる/村上 勉『だれも知らない小さな国 コロボックル物語』ISBN:406119075X…村上勉の絵を見て懐かしくなったので。村上勉の絵が見られるTsutomu Murakami Official Site。この人の描く、猫の目頭が好き。
ところで驚きの超常現象を受け入れることで合理的解決を導くパターンの話って他にあるんだろうか。知っている人がいたら教えてください。
*1:男の子が右向きor左向き
Hebi2004/05/12 20:13herecy8さんから「黒い仏」を薦めていただいて、読んだのに、あまりのすごさに感想が書けなかったのです。ごめんなさい。