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2008-01-11

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MM9

MM9

「巨大怪獣」が実在するとしたら、なおかつ頻繁に日本を襲撃しているとすれば、当然それは社会の日常に組み込まれている筈だ。ニュースには怪獣予報が流れ、監視を業務とする政府機関が存在する、そんな世界。

発想自体は独特というわけでもない。私も以前似たようなものを書いたし、多分他にも似たようなことを考えた人はいた筈だ(私のだって、源発想はもう15年以上前のことだし)。

ただ、そこからの処理はちょっと面白い。


怪獣は災害の一種なので、対策チームは気象庁に所属する。業務は観測と対応策の提示であって、実際の防衛は自衛隊の担当だ。

怪獣は物理的に存在できない。生体の強度ではとうてい巨体を支え切れずに自壊確実だし、通常兵器で簡単に撃破できるだろう。けれど実際のところ怪獣はそんなにヤワではない。つまり、物理法則に従っていないのだ。それは何故か。


「怪獣番組をリアルに考察した」ぐらいの軽いノリで走りつつ、終盤できちんと論理的にSFして見せる。最後の大怪獣が例のアレなのはお約束、その扱いが悪評芬々たるダ式なのは単にこちらの方が怪獣ものに相応しいからだろう。そして怪獣の存在、神話や創作の存在をも取り込むことで現実との繋がりを示唆、「有り得たかも知れない世界」のリアリティを演出してみせる。それでも、どこか軽くエンタテインメント感が強いのは否めないのだが。


図書館からの借り物だったが、あまりに面白いので読みかけの状態で書店に走ったが現物入手はならなかった。手元に置きたい一冊。

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2006-12-02

[]『神は沈黙せず』 『神は沈黙せず』 - 芹沢蔵書目録 を含むブックマーク はてなブックマーク - 『神は沈黙せず』 - 芹沢蔵書目録 『神は沈黙せず』 - 芹沢蔵書目録 のブックマークコメント

神は沈黙せず

神は沈黙せず

まだ12月も始まったばかりだが、これはもう既に「今月の三冊」入り決定。大変な力作であった。


ネタとしてはそう目新しいものでもない。世界の実在性懐疑、就中計算機仮説自体はよくある論だ。ただ、ここで新しい切り口として提唱されているのは物理法則を足掛かりとしたものではなく、超常現象からのアプローチだ。


UFO、幽霊、超能力-----普通なら荒唐無稽と一蹴されるこれらの情報の中に、もし真実が含まれているとしたら?

実際、超常現象は全てが否定されているというわけでもない。というより、目撃談をまともに検証した例そのものがごく少数で、殆どは「はいはいワロスワロス」で終わりではなかろうか。「経験的に言って殆どがフィクション」というのはそれなりに意味のある判定方法ではあるのだが、その根拠となるデータ自体が適切にサンプリングされていないのだとしたら、判断自体の信憑性が危うい。


本書ではそうした過去の超常現象についての記録を、膨大なサンプルを元に検証、信頼性の高いデータ例を挙げてゆく。「超常現象なんて全部嘘だから否定する」ではなく「その現象はこう考えれば説明が付く」でもなく、「現象があった」という事実のみを認識することで何が見えてくるか。

ここから「神(に相当する存在)」を導き、またそれによって変化する社会を描く、社会派ハードSF。「と学会」の中心人物だからこそ書き得る傑作であった。


突っ込み所はいくつかある。例えば人類が演算処理のための存在なのだとして、そのために書き割りを用意するような手の込んだ「環境の演出」が必要だろうか、といった疑問。或いは(これは本書固有の欠点ではなくSFの持つ構造的な宿命なのだが)理論を立証し補強するデータ自体が創作されたものであるという空疎。

しかし、そうした点を差し引いても紛れもない傑作である。

ドーキンス好きは必読。

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2006-11-17

[]『まだ見ぬ冬の悲しみも』 『まだ見ぬ冬の悲しみも』 - 芹沢蔵書目録 を含むブックマーク はてなブックマーク - 『まだ見ぬ冬の悲しみも』 - 芹沢蔵書目録 『まだ見ぬ冬の悲しみも』 - 芹沢蔵書目録 のブックマークコメント

まだ見ぬ冬の悲しみも (ハヤカワSFシリーズ―Jコレクション)

まだ見ぬ冬の悲しみも (ハヤカワSFシリーズ―Jコレクション)

ラギッド・ガール―廃園の天使〈2〉 (ハヤカワSFシリーズ―Jコレクション)と一緒に並んでいたのでついでに購入。ハヤカワへの登場は初めてだっけ?

グループSNEメンバとしての活動が印象に深くラノベ系へのコミットが想起される山本弘だが、実はSF作家としてもなかなかの書き手。個人的にはパワードスーツの傭兵を描いたサイバーナイト―ドキュメント 戦士たちの肖像 (角川文庫―スニーカー文庫)(シリーズ全体としては機械知性を含む壮大なハードSFだが、そのワールドガイドを兼ねて書かれたこの作品はフリージャーナリストの手記の形態を取っており、現実味を持たせることに成功している)などが思い出深い。


さて本書のレビューに移ろう。ハードSFあり、ホラーあり、ギャグ系作品ありの短編集になっており、様々なテイストが楽しめる。

サイボーグ009へのオマージュ「奥歯のスイッチを入れろ」は音速で行動できるサイボーグの戦いをリアルに描いた作品。

「メデューサの呪文」はある種の変形クトゥルフ作品と言えようか。

「シュレディンガーのチョコパフェ」は……題名からしてちょっとアレゲなナンセンスハードSF。

これ1冊で色々楽しめるお得な一冊と言える。欲を言えば長編も期待したいところだ。

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審判の日

審判の日

こちらは主にアイデンティティ問題を中心とした短編集。ヴァーチャルリアリティなどではなく宇宙の成り立ちなどから世界の根幹を揺がせて見せる手法は面白い。

ただちょっと気になったのが……(以下ネタバレ注意)

宇宙が「偶然にも現在の形で出現した」のだとすれば、過去積み上げられてきた理論そのものに何の裏付けもないことになりはしないか。それは単に「それが正しい」という記憶に過ぎず、実際には一度も検証されたことがないのだから。とすれば、その理論を元に宇宙の始まりを計測することも終末を予測することもナンセンスであると思うのだが、どうか。

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アイの物語

アイの物語

真の知性体たるAIについての物語。「アイ」は一人称としてのIであり、AIが感情を表現する複素数平面の虚数iであり、AIでもあり、また恐らくは愛でもある。

人間とは異なる知性体としてのAIを通すことで人間の知性性を再認識することとなろう。

バラバラに発表された短編を繋いで一つの長編に仕立て上げた手法は見事の一言。

藍色藍色2009/11/09 01:32こんばんは。同じ本の感想記事を
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