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2008-11-27

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赤い星 (ハヤカワSFシリーズ・Jコレクション)

赤い星 (ハヤカワSFシリーズ・Jコレクション)

ハヤカワのJコレクションから発売したものとしてはアイオーン、ラーに続く3作目となる、例によって歴史改変ものSF。「ネット技術が歪に発達した/帝政ロシアの属国となった/江戸」既にこれだけで満腹すぎるほどの高野節炸裂である。

陰謀の国ロシアの二重三重に張り巡らされた謀略、仮想現実と現世の重ね合わせ、我々の知る歴史と書中の架空史の二重露光。どこからが正史でどこまでが架空史なのか、作中ですら混迷し眩惑される。とりわけロシア史は我々にとって馴染みの薄い代物であるから尚更だ。

冒頭のボリス帝戴冠は史実ならば16世紀の話らしい。確かにそれなら日本は江戸時代だ。けれど一方で「ソ連時代には」なんて一文が紛れ込んでいたり、遺失技術らしい(恐らくはソ連時代のものなのだろう)攻撃衛星まで登場したりと時代設定は混沌を極める。


作者も認めるように、本作には普通ならば中〜長編が書けるだろうプロットが数本分詰め込まれている。ために焦点が定まらず散漫な印象は否めない。しかし眩惑を旨とする氏の作風に於いては、それは必ずしも悪いことではないのかも知れないが。

惜しむらくは、過去の作品同様、他作品との繋がりが見えない点か。別に繋げる必要があるわけでもないのだが、同一手法で書き継いでいる以上、読者としてはついそれらを複合した「大きな世界」を夢想してしまう。

多分、作品ごとに完結した設定として構想されているもので別作品との整合性を撮るのはかなり困難だろうとは思うのだが、それができれば一層の深みが得られるのに、と思うと残念でならない。

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