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2007-12-28

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前巷説百物語 (怪BOOKS)

前巷説百物語 (怪BOOKS)

シリーズ最後の作にして、最初の話。御行の又市が御行の又市になるまでの話である。

これまでのシリーズと違って綺麗に落ち着かない。ある意味で失敗の連続である。しかし、それこそが作者の狙ったところであり、作品としては成功していると言えよう。

あらゆる損を金で引き受け埋める、「損料屋」の手下として仕事に関ることで、誰もが納得する形での落とし前の付け方を学び、演出としてのケレンを学び、方便として化け物を活用することを学び、裏世界との関り方を学んでゆく。


しかしまあ、なんと稀有な作品であったことか。単純な勧善懲悪の意趣返しものは世に数あれど、双方の事情を汲み、世間の風評も鑑みて八方丸く収めるなんて発想が他にあっただろうか。

妖怪の仕業に思える事件の憑き物を落とし理路整然と解読して見せる京極堂シリーズと、複雑に絡む事情をすべて妖怪に押し付けて解消して見せる巷説百物語シリーズ。実に好対照な作品群であった。

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2007-12-21

[]『物魂』 『物魂』 - 芹沢蔵書目録 を含むブックマーク はてなブックマーク - 『物魂』 - 芹沢蔵書目録 『物魂』 - 芹沢蔵書目録 のブックマークコメント

物魂―ものだま (ハルキ・ホラー文庫)

物魂―ものだま (ハルキ・ホラー文庫)

「人形の呪い」を描くホラー。正味な話あんまり怖くない。むしろこの作品の主眼は作中で語られるサブカルにあるんじゃないかという気が。幻の偽書はちょっと興味が。

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百器徒然袋 風 (講談社ノベルス)

百器徒然袋 風 (講談社ノベルス)

京極堂シリーズ外伝、第3作目らしい。他がなかったものでこれから読み始めてしまったのだが、どうも1〜2作との関連もあったようでちょっと失敗。

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後巷説百物語 (Kwai books)

後巷説百物語 (Kwai books)

江戸末期を舞台に、怪異を事件として解き明かし、また怪異として決着を着ける「御行又市」シリーズの完結作。時代はあれから数十年下って明治10年頃、百介は隠居し九十九庵の一白翁として、若き元武士たちが持ち込む怪異事件に過去の類例を以て答えるという形式である。

完結とは言いながらも、実はこの後に百介と逢う前の話として「前-」が書かれているのだが。

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エピデミック

エピデミック

疫学小説である。分類上は社会小説あるいはSFに分類されるのだろうか、しかし読後感はむしろミステリ。


疫学とは、大雑把に説明すれば流行性疾患を防止するための学問である。病の機序を解き明かす病理学とも症状の対処を旨とする医学とも異なり、統計学を道具として感染源や伝播経路を推定し元を断つことで被害の拡大を防ぐ。

疫学の機能を端的に説明する例としては1848年のコレラ感染を終息させたブロードストリート事件などがある:患者の住居を地図にプロットした結果、患者の集中する地域の井戸を感染源と推定、「この井戸水を使っていたかどうか」を調査することで説を裏付けたもので、コレラ菌が発見される30年前のことである。

(参考:疫学 - Wikipedia)

このように、疫学は病原不明でも感染を防止することができる。


患者のデータを仔細に分析し共通項から感染源を推定、また特定条件に曝露された群とされない群の発病率を比較することで仮説を検証してゆく様は、作中にも語られる通り医者よりは探偵に近い仕事に思える。逆に推理小説に手法として取り入れたら面白いかも知れない。


ところで以前から気になっているのが、川端氏が度々語る「医学は疫学を科学と見做していない」という話。医学側からの発言を直接確認したものではないが、少なくともこれは私が疫学に抱いた印象と食い違う。

疫学の調査手法は明らかに科学的思考に則ったものだ。確かに「恣意的にパラメータを変動させた統計に基づく」というのは危うさを感じぬでもないが、それは推定のための道具に過ぎず、仮説に基づく検証は欠かしていない。

それに科学としての不安定さは医学とて似たようなものだ。ほとんどの知識は経験に基づくもので、「どうしてこうなるかは解らないが効くことだけは確か」というものも多い。病理学にしても総当たりによる病原特定など、凡そ理論的とは言い難い手法がしばしば用いられ、科学としての洗練はない。

疫学は、科学と言えば充分に科学の範疇だし、理論科学でないと言えば医学も病理学もその範囲にない。「同じ穴の狢」なんじゃないかと。

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2007-12-12

[]『香菜里屋を知っていますか』 『香菜里屋を知っていますか』 - 芹沢蔵書目録 を含むブックマーク はてなブックマーク - 『香菜里屋を知っていますか』 - 芹沢蔵書目録 『香菜里屋を知っていますか』 - 芹沢蔵書目録 のブックマークコメント

香菜里屋を知っていますか

香菜里屋を知っていますか

香菜里屋シリーズ、終に完結。アームチェア・ディテクティヴの秀作であり、雰囲気の良い連作短編であり、また複数の作品を繋ぐ結節点でもあっただけに収束は残念だ。しかし何事にも終わりは来る。

書き下ろしの表題作は、これまで語られて来なかった工藤自身の謎に、各シリーズの主要人物が迫る。ある意味で北森作品そのものの締めとさえ言える小話である。まさか北森自身がこれで引退、なんてことはないと思うが。


ところで本シリーズはこれまで手元に置いてなかったのだが、この機に揃えるとしようか。

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2007-12-10

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空中飲茶飯店 上 (眠れぬ夜の奇妙な話コミックス)

空中飲茶飯店 上 (眠れぬ夜の奇妙な話コミックス)

空中飲茶飯店 下 (眠れぬ夜の奇妙な話コミックス)

空中飲茶飯店 下 (眠れぬ夜の奇妙な話コミックス)

深海蒐集人 (眠れぬ夜の奇妙な話コミックス)で海面上昇による水没後の世界を描いたかまたきみこの新作は、温暖化の進行により化石燃料の利用が厳しく制限された未来社会。安全な食、天然の素材がなにより珍重される世界。なかでも最高の価値を持つのが「茶」-----世界は事実上、茶の交易に支配される。

中国は一早く化石燃料に拠らぬ画期的な動力源を実用化し、その利用権と茶の交易を盾に大きな政治力を担っている。そして金よりも貴重な茶を守り、運ぶのが背中に翼を背負って天を駆ける茶運師サウジの仕事である。


設定だけ見るとSFのようだが、むしろ中世中国を舞台とするファンタジーと見た方が近い。無数の思惑が絡む、なかなかに複雑な世界だが、構えず気楽に読むが良い。

読んでいるうちに確実に中国茶が欲しくなるので、お気に入りの茶葉を用意しておくこと。

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2007-12-04

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神様のパズル

神様のパズル

大統一理論の話。もう少し噛み砕くと「宇宙を作る方法」。

物理学というのは何でも解っているようで、その実突き詰めれば突き詰めるほど解らないことが増えてゆくような学問である。解らないことを解るようにする学問というより、むしろ解らないことの範囲を確認する学問であるかのようだ。

とは言え……仮にもそれを専門に学ぶ大学生が、こんなに何も解らない状態で大丈夫なんだろうか。


大統一理論。物理的なあらゆる力を記述するひとつの理論として仮想されているもの。

電気と磁気の統一にはじまり、新たな力の発見と統一により20世紀物理学は進んできたと言っても過言ではない。素粒子を説明し、すべての物質の成り立ちを説明し、あらゆる力を説明する唯一の理論。ある種、科学に於ける究極の真理とも言える。

これを扱うSFはいきおい、現代科学がまだ明らかにしていない深淵へと足を踏み入れざるを得ない。話の都合上、大統一理論モデルが完成した(少なくともその手掛かりを掴んだ)として扱うことになるが、それはつまり世界中の物理学者が誰一人として到達していないことを語ってみせるということだ。

実際のところ、ここで語られたイメージが真実である可能性は非常に低いだろう。そもそも数学的な部分でまったく破綻しているかも知れない。けれども、発想の転換とそれにより突然開ける視野は間違いなくSFの、そして科学の魅力を十二分に伝えている。小松左京賞受賞、小松左京氏激賞の文句に嘘はない。


映画化された

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シシ12か月 (ジェッツコミックス)

シシ12か月 (ジェッツコミックス)

滅多に単行本の出ない作家の、久々の著作。この前買ったのは1年半ぐらい前?

なんのかんのと長い土地神シリーズの1作。まあ正直、多分ファン以外にとっては特に見るべきところもないのではないかという気がする。それぐらい、のんびりまったり。

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チェーザレ 破壊の創造者(4) (KCデラックス モーニング)

チェーザレ 破壊の創造者(4) (KCデラックス モーニング)

基本的に史実ベースなので「ストーリー上演出された盛り上がり」のようなものがなく、これが作品全体で一体どのぐらいの位置にあるのか、つまりもうすぐ終わりそうなのか始まったばかりなのか、さっぱり見当もつかない。ひとつ言えるのは、本当に雑誌掲載と単行本発売にタイムラグがない、つまり最初から完成形であり、雑誌掲載のタイミングはかなり余裕を持っており(単行本印刷の方が早くから進められているはずだ)、たった今紙面で初めて読んだ人もその足で単行本を書いに行って大丈夫、ということ。そして、恐ろしくクオリティが高く面白いということ。


やっぱり私は理論的ゆえに人と話が通じないキャラが好きすぎる。

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2007-12-02

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フロストハート

フロストハート

先に読んだ夏の滴 (角川ホラー文庫)が非常に良い出来だったので期待したが、それほどの作品ではなかった。

内蔵が石化する奇病を中心とする話なのだが、時間SF的要素やサスペンス的要素などを色々詰め込みすぎて主体がぼやけてしまっている。ホラーのつもりだったのかSFのつもりだったのか。人物描写からの行動必然性もいまいち不明瞭、理論面も説明不足。

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メシアの処方箋

メシアの処方箋

インドで氷河湖の決壊により発見された"方舟"の中身は六弁蓮華紋が並ぶ木簡だった。聖典?-----にしては、花弁の塗りパターン以外に違いを見出せない。文字にしては奇妙な記号と言える。

箝口令を無視して個人的にWebサイトでデータの一部をクイズとして出題した中に、意外な答えがあった:アミノ酸の塩基構造。

もっと突っ込んで言えば、これは要するにDNAではないのか。だとすれば、どのような生物なのか。

宗教の根源に関わる問題だけに、そのまま発表しても握り潰される可能性が非常に高い。ならば秘密裏に実験してしまおう……


理論面では荒削り、描写面でも不足が多いが、それでも作品としては中々のもの。敢えて表現すれば「アジアのダヴィンチ・コード」といったところか。なんか色々な意味で例えに問題がある気はするが。

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