芹沢蔵書目録 このページをアンテナに追加 RSSフィード

2007-11-30

[]『僕たちの終末』 『僕たちの終末』 - 芹沢蔵書目録 を含むブックマーク はてなブックマーク - 『僕たちの終末』 - 芹沢蔵書目録 『僕たちの終末』 - 芹沢蔵書目録 のブックマークコメント

僕たちの終末

僕たちの終末

前回ちょっと外し気味だった作者なのでやや警戒しつつ読んだが、これは素晴らしい出来だった。


南極氷中のニュートリノ痕跡観測により判明した、近未来に発生するであろう太陽風の爆発的発生。

間違いなく、このまま地上に住んではいられなくなる。各国はシェルター建設を開始したが、どう見ても全員を収容するには至らない。しかも太陽嵐は数十年続く気配だ。

では、どうすれば良いか。いっそ太陽系を脱出しよう!

そんなわけで(大元の痕跡を確認したニュートリノ天文学者である)男は取り敢えず「World End Space Travel」というサークルを設立、会員を集め会費を徴収して恒星間航宙船を建造する計画を立てた。が-----

それから先に進まない。宇宙開発はそれ自体が莫大な資金を必要とする。しかもこの計画は、誰一人として試行したことのない大計画である。本来なら国家事業、いや国際事業であるべき規模の。


要するにこれは、人類(の一部)が太陽系を脱出するまでの社会を描くSFである。方向性は限りなく小川一水に近い、けれども小川が往々にしてプロフェッショナル同士による理知的な世界を描くのに対し、機本のそれはむしろダメ人間によるものだ。

大言壮語するが自分では何も実行できない発起人、企画とマネジメントは零細の人材派遣会社。政治的駆け引きを蹴ったが故にどこも製造を受注してくれない状況。対立する企画、子供じみた夢と陰険で利己的な陰謀……最低の状況だ。

しかし「駄目元」でなんとか状況は回転してゆく。100兆円は下らない超巨大事業の行方はいかに。

情けなくも壮大なSFであった。惜しむらくは終盤のコンピュータとのかけひき。どうも機本はコンピュータに対する理解が弱いように感じる。


ところで、どうも私は「理論的で心理を理解しない」人に弱い。もうメロメロに。

トラックバック - http://book.g.hatena.ne.jp/DocSeri/20071130

2007-11-27

[]『夏の雫』 『夏の雫』 - 芹沢蔵書目録 を含むブックマーク はてなブックマーク - 『夏の雫』 - 芹沢蔵書目録 『夏の雫』 - 芹沢蔵書目録 のブックマークコメント

夏の滴 (文芸シリーズ)

夏の滴 (文芸シリーズ)

以前読んだ小説探偵 GEDO (SFシリーズ Jコレクション)がなかなか面白かったので借りてみた。


一言で言えば「超常現象も怪物も出ないホラー」。フィクションであるから架空の存在は登場するが、それは(この世界の中では)現実の枠組みを越えた存在ではない。機序は不明ながら因果関係は立証されている。

だからこの物語の主体は、人間の恐さである。


序盤は子供らの、悪意とも思わぬ(けれどそれ故に強烈な)苛めの居心地悪さを味わうことになる。「触ったら腐る」とまで言われ、日常的にクラス全員からの暴行を受け続ける少女と、それを異常に思わぬ周辺(主人公や担任を含め)の気持ち悪さ。

しかしその彼らさえも、もっと大きな悪意に呑まれる小さな存在に過ぎない。


ホラーの常として、徐々に情報が明かされ恐怖が進行する構成を取ってはいるが、桐生の文体はむしろ常識外れの状態をいきなり突き付けるのが本懐であるように思う。この点については今後のSFとしての展開に期待したい。


ともあれ、これはホラーとしてかなりの良作だ。怪物に飽き、人間の悪意を存分に楽しみたいならばお薦めする。

トラックバック - http://book.g.hatena.ne.jp/DocSeri/20071127

2007-11-26

[]『冬至草』 『冬至草』 - 芹沢蔵書目録 を含むブックマーク はてなブックマーク - 『冬至草』 - 芹沢蔵書目録 『冬至草』 - 芹沢蔵書目録 のブックマークコメント

冬至草 (ハヤカワSFシリーズ・Jコレクション)

冬至草 (ハヤカワSFシリーズ・Jコレクション)

「血液で育つ植物」というからホラー作品を期待したのだが、これは……なんというか、半端な印象の短編集であった。

一言で言えば「小説以前」。悪文というわけではなく、むしろ表現としては端的で読み易いとすら言える。しかし何のストーリーもなく淡々と「出来事を報告する」だけの代物なので、読んでも面白くもなんともない。

トラックバック - http://book.g.hatena.ne.jp/DocSeri/20071126

2007-11-25

[]『うさぎドロップ(3)』 『うさぎドロップ(3)』 - 芹沢蔵書目録 を含むブックマーク はてなブックマーク - 『うさぎドロップ(3)』 - 芹沢蔵書目録 『うさぎドロップ(3)』 - 芹沢蔵書目録 のブックマークコメント

うさぎドロップ (3) (Feelコミックス)

うさぎドロップ (3) (Feelコミックス)

出てるのを忘れてた子育て漫画。りんは小学生に。

ストーリー漫画ではないから特に評すべき部分もないわけだが。一緒になってりんの成長を見守るような心境。

[]『どんぐりくん(4)』 『どんぐりくん(4)』 - 芹沢蔵書目録 を含むブックマーク はてなブックマーク - 『どんぐりくん(4)』 - 芹沢蔵書目録 『どんぐりくん(4)』 - 芹沢蔵書目録 のブックマークコメント

どんぐりくん 4 (バンブー・コミックス)

どんぐりくん 4 (バンブー・コミックス)

どんぐり学園1年生のショートストーリー、とうとう完結。

くぬぎ先生は唐突に倖せになっているようでなにより。

[]『庭先案内(3)』 『庭先案内(3)』 - 芹沢蔵書目録 を含むブックマーク はてなブックマーク - 『庭先案内(3)』 - 芹沢蔵書目録 『庭先案内(3)』 - 芹沢蔵書目録 のブックマークコメント

庭先案内 3 (BEAM COMIX)

庭先案内 3 (BEAM COMIX)

ゆず=おさんぽ大王ですっかりルポ漫画家といて定着してしまったが、やはり須藤漫画の王道はこの辺りのロー・ファンタジーものだ。幻燈機老人シリーズ、七福神シリーズほか。

[]『百鬼夜行抄(16)』 『百鬼夜行抄(16)』 - 芹沢蔵書目録 を含むブックマーク はてなブックマーク - 『百鬼夜行抄(16)』 - 芹沢蔵書目録 『百鬼夜行抄(16)』 - 芹沢蔵書目録 のブックマークコメント

百鬼夜行抄16 (眠れぬ夜の奇妙な話コミックス)

百鬼夜行抄16 (眠れぬ夜の奇妙な話コミックス)

とうとう三郎さんが転生してしまった。

相変わらずホラーと言えるほど暗い話ばかりなのに、主人公が淡々としているので不思議と怖くなりすぎない。

トラックバック - http://book.g.hatena.ne.jp/DocSeri/20071125

2007-11-20

[]『朝日のようにさわやかに』 『朝日のようにさわやかに』 - 芹沢蔵書目録 を含むブックマーク はてなブックマーク - 『朝日のようにさわやかに』 - 芹沢蔵書目録 『朝日のようにさわやかに』 - 芹沢蔵書目録 のブックマークコメント

朝日のようにさわやかに

朝日のようにさわやかに

様々な形で書かれた作品を一冊に纏めた短編集

最初はシリーズものの続きから始まったのでその方向性を期待したのだが、実際のところまったく統一性のない本であった。

ミステリあり、ブラックなショートショートあり、ホラーあり、エッセイあり。

元々幅の広い作家ではあるのでファンタジーでもホラーでもSFでもミステリでも読んできたし、それらはどれも面白かったが、基本的には明快に筋が通るカタルシスのある作ばかりであり、そうでないエッセイのようなものや起伏を求めないブンガク的なが混じってくると非常に落ち着かない。

[]『中庭の出来事』 『中庭の出来事』 - 芹沢蔵書目録 を含むブックマーク はてなブックマーク - 『中庭の出来事』 - 芹沢蔵書目録 『中庭の出来事』 - 芹沢蔵書目録 のブックマークコメント

中庭の出来事

中庭の出来事

チョコレートコスモス』に続く演劇もの、かつミステリ。

ある中庭に於ける、衆人環視下での劇的な死。同じような場面での同じような出来事。3人の女優による、同じ台本を元にした演技。何度も繰り返し、その度に少しづつ違う情景。メタにメタを重ね、もはやどこが外でどこが内なのか判らない。どれがフィクションなのか、どれが実際の事件なのか。死んでいるのかいないのか。殺したのか殺していないのか。


作中に天才的な脚本家として登場する芹沢。彼はミステリタッチの、明快なカタルシスのある筋書を得意として登場し、複雑さを重ねた重厚路線へと幅を広げた作家として描かれる。そして、そのことを古いファンが良しとしない旨も。これが何かを意図しての描写かどうかは不明ながら、妙に恩田自身と重なって感じられる(実際、上でそのようなことを書いた)。

トラックバック - http://book.g.hatena.ne.jp/DocSeri/20071120

2007-11-07

[]『ほしからきたもの。』 『ほしからきたもの。』 - 芹沢蔵書目録 を含むブックマーク はてなブックマーク - 『ほしからきたもの。』 - 芹沢蔵書目録 『ほしからきたもの。』 - 芹沢蔵書目録 のブックマークコメント

ちょっと敬遠気味だった作品。なんか露骨にラノベ風だったので。

……まあ結論から言うと、印象は間違っていなかった。ただ、それはそれとして面白かった。

元々笹本はラノベ的/アニメ的設定を主体にあらん限りの知識を詰め込んでハードにSFたりうるものを書く作家なのだから、本来ならラノベっぽさはあまり問題にならない。ただ……戦闘機もので主人公が12歳の少女ってのはどうなんだと。

まあそもそもが「最近のアニメがつまらんので深夜アニメ13話設定で構想したらどうなるか」からスタートしたという作品。む、この辺り「エリアル」と同じノリだな。

でもやっぱり12歳はちょっと。しかも性格が直情的に過ぎる。この辺り、同じようなことをやっていても野尻の描くゆかり@ロケットガールの方が上手。

2巻まではまったくの序章、今後やっと本格的な活動に……という所まで来てもう3年以上止まってるんですが何やってんですか笹本さん。

トラックバック - http://book.g.hatena.ne.jp/DocSeri/20071107

2007-11-06

[]『おまかせハウスの人々』 『おまかせハウスの人々』 - 芹沢蔵書目録 を含むブックマーク はてなブックマーク - 『おまかせハウスの人々』 - 芹沢蔵書目録 『おまかせハウスの人々』 - 芹沢蔵書目録 のブックマークコメント

おまかせハウスの人々

おまかせハウスの人々

高度情報化社会というディストピアに生きる、悩める人々を描く短編集。生活を便利にするはずの情報が氾濫し過ぎてそれに振り回され、或いは情報の信頼性を確認する術がない為に依り所を失う人たちは苛立たしいほど愚鈍であり、読んでいてある種の不快感すら覚えるほどだ。

とは言え近未来SFとして面白い作品ではある。実際にこのようにならないとは言い切れない世界……これは予見された病だ。


現代に生きる「古い」人間たちが情報化の発達に取り残されて心の病を発症するのと対照的に、この時代に生まれ育った人たちはそれぞれに折り合いの付け方を学んで逞しく生きている。『フード病』で食の安全を気に病み過ぎる二人の中年女性よりも、割り切って不安を気にかけず生きる高校生の明晰さが印象的。

トラックバック - http://book.g.hatena.ne.jp/DocSeri/20071106

2007-11-03

[]『夜市』 『夜市』 - 芹沢蔵書目録 を含むブックマーク はてなブックマーク - 『夜市』 - 芹沢蔵書目録 『夜市』 - 芹沢蔵書目録 のブックマークコメント

夜市

夜市

夜市-----鬼市、黙市などとも。盗人や人攫いのようなまっとうでない者、あるいは人ならざる者共が商品を売り買いする市。

幼い頃、夜市に紛れ込んだ裕司はここで何かを売り、何かを買った。そして、今日までそれを悔いている。ふたたびこの地に開かれた夜市を訪れた彼はここで何を売り、何を買うのか。


人外の者が通り抜ける空間「古道」を扱った中編ともども、古来の伝えを元としたファンタジーでありながら、同時にミステリ的でもある。扱う題材も含めて今市子の『百鬼夜行抄』を思わせるものがある。

トラックバック - http://book.g.hatena.ne.jp/DocSeri/20071103

2007-11-02

[]『時砂の王』 『時砂の王』 - 芹沢蔵書目録 を含むブックマーク はてなブックマーク - 『時砂の王』 - 芹沢蔵書目録 『時砂の王』 - 芹沢蔵書目録 のブックマークコメント

時砂の王 (ハヤカワ文庫JA)

時砂の王 (ハヤカワ文庫JA)

何度、総毛立ったことか。小川の得意とするふたつの路線が見事に融合した、これは本当の傑作だ。


26世紀、突如として機械軍団の侵略を受け太陽系から撤退した人類は、自らの存在を賭した大攻勢に出る。即ち、時間遡行による過去時点での防衛線構築である。

歴史をどこまで改竄しようとも、人類種の存続という時間線だけは死守するための戦。統合機械知性体と、その指揮下に戦う肉体を持った知性体による軍を仕立て、永劫の時間を戦い抜く。


これは時間SFであり、それ以上に社会SFである。22世紀官僚社会の確執、20世紀の権謀術数、……3世紀日本の絶望的な武力。

敵はエネルギーと資源さえあれば無限に増殖する。エネルギーは陽光でも充分、過去ならば資源はまだ手付かず。従って通常の戦と異なり、「撃退したら守りを固めて体制を整える」なんていう余裕はない。損害覚悟で連戦に連戦を重ねて最後の1拠点まで完全に殲滅する以外に、勝ち目などない。

そして戦線は、地上平面だけでなく過去=未来時間線にも築かねばならない。いずれかの時点で殲滅されてしまえば、それ以降の時間線が消失するからだ。従って人類発祥以来の全時間を守る必要がある。あらゆる時間線での、あらゆる社会での全面戦争。


惜しむらくは280ページ弱と短かいこと。この内容ならば、やろうと思えば全12巻ぐらいの長大な戦記に仕立てることだって出来ただろうに。

同人レヴェルで個々の戦記が描かれたりしないものだろうか。


書き忘れた。時代移動の度に1から施設構築し直し/確保した資源に応じて使える技術が変化するあたり、非常にRTS的な感じを受けた。ある種のRTSノヴェライズとして読むのも一興(あるいは逆か?RTSが戦記のゲーム化として優れたシステムであるとも言えるのか)。

トラックバック - http://book.g.hatena.ne.jp/DocSeri/20071102