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2006-10-26川端裕人フェア:続き

手元にはあと5冊。うち2冊を読んだ。

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みんな一緒にバギーに乗って

みんな一緒にバギーに乗って

保育士小説。特に男性保育士を中心に描いている。

そう言えばこの人、PTA活動などを中心に教育分野にも強い関心を持っているのだった。

私の好きな川端作品は科学に論点を置いたもので、その点では少し外れるが、丁度保育園の通園経験がある上の娘が今度は幼稚園に通う年齢になったあたりで、無縁の世界でもない。

まあ、それはあくまで保護者の視点であって保育士の視点ではないのだけれど、それなりに思うところがあったのも事実で。

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銀河のワールドカップ

銀河のワールドカップ

私は基本的にスポーツとは無縁で、とりわけ球技に関してはする方はおろか見る方も殆ど関心がない。例外は多分ゲートボールぐらいだ。

まったくの無知というわけもなくて、サッカー好きの友人に多少の講釈を受けたりして一応の知識は持っているが、積極的にサッカー漫画やサッカー小説を読むようなことはなかった。

それがまさか、こんなにも夢中になろうとは。


少年サッカーの話である。元J2のFWが草サッカーをしていた数人の少年に請われコーチに就く。才能溢れるが我が強く組織に馴染めなかった三つ子を中心にチームは急成長し、終には「銀河軍団」と試合う……筋だけ語ってしまえばそういうことになる。


無理のある話だ。どれほどの才能であろうと、たかが小学生のサッカーチームが大の大人、それもスペインの強豪とやりあおうというのだから。

無理を無理でなくするためには天才が必要だ。だから、この話には何人もの天才が登場する。

けれど、単に天才の伝説、ではない。どんなチームも天才だけでは構成できないのだ。幾人かの天才を、凡庸なチームメイトが補佐する。彼らは凡人で、度肝を抜くような才能は持ち合わせていない。けれども時々、きらりと光るものを見せる瞬間がある。これはそういう話だ。そういう話の積み重ねだ。


川端裕人の文章はイメージさせる力が強い。描写力-----とは少し違うような気がするが、文章がすんなり頭に入ってきて、具体的なイメージが結実する。これまでの作品ではそれが主として科学的説明に活かされてきたのだが、本作ではそれが戦況と戦術の説明にぴたりと嵌まっている。


サッカー好きの人がこれを読んでどんな感想を抱くのかは判らない。けれども、サッカーに思い入れのない人でも-----あるいはそういう人こそ、楽しめる作品だと思う。


今月の三冊に推す。残り二冊は考えてないけど。

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2006-10-24

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てのひらの中の宇宙

てのひらの中の宇宙

一人称で書かれた、私小説のような雰囲気の短編集。幼ない子供と闘病中の妻を持ち自宅で仕事をする男性の視点を介して、子供の目から見た世界の理解を描く。

エンタテイメント性は控えめで柔らかな印象ながら、氏の拠り処である科学的視点が感じられる。

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倒錯の帰結 (講談社ノベルス)

倒錯の帰結 (講談社ノベルス)

森を中心にミステリを堪能した勢いで普段あまり読まないあたりにも手を出してみているのだが、どうも折原一とは相性が悪いようだ。

本書は同じ登場人物の関る二つの事件を描いた2冊の本を一つに結合したような体裁を取っている。一方を読み終えたら本をひっくり返してもう一つを読み、最後に袋綴じのオチを楽しむという手法。

叙述トリックの旗手として、叙述による密室トリックという新境地を開拓したことは評価するし、面白くないというわけではないのだが、いまいちのめり込めないのは文体の所為だろうか。

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邪魅の雫 (講談社ノベルス)

邪魅の雫 (講談社ノベルス)

久しぶりの一冊。800ページ超の新書-----京極の京極たる作品である。読み難さをなんとかして欲しいとは思わぬでもないが。

例によってミステリのようでミステリではない。「こんなの判るか!」と思いつつ、それはそれとして京極作品の特徴である主観の相違を楽しむ。

因みに、今回は珍しく作品の舞台となった大磯・平塚地域向けに邪魅の雫 大磯・平塚地域限定特装版 (講談社ノベルス)が用意されている。内容に違いはあるまいし、本棚に並べて置くなら通常版が相応しいが。

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2006-10-16川端裕人フェア

『ロケットの夏』が面白かったのと、「水伝」関連を中心にしばらく氏のBlogを読んで関心を深めたので集中的に著作を読む。

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The S.O.U.P. (文芸シリーズ)

The S.O.U.P. (文芸シリーズ)

ネットワークRPGとハッカー文化を巡る冒険。インターネットの脆さとかワームの可能性とか、様々なものがファンタジーRPGに絡めて語られる。

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ニコチアナ

ニコチアナ

煙草に纏わる文化の話。シガレットの意義とか分煙→無煙運動とか「新大陸から奪った喫煙習慣は文化と言えるのか」とか。

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竜とわれらの時代

竜とわれらの時代

古生物学と創造科学論。恐竜の形態についての新説は興味深い。けれども、それらの立脚点が作中にしか存在しない架空の化石に基づくものであるのが残念。

SFとはしばしばそういうものなのだけれども、「新たな理論の可能性」が示されながらもその根拠自体が架空のものである、ということを認識するのは少し寂しい。


川端氏の小説というのは緊張感があるというか、序盤に大きな可能性を示してから次の山が来るまでの間隔が短かい特徴がある。それも小さなものではなく、作品によってはそれでクライマックスも有り得るほどの山である。これはなんというか、ちょっと新しい読み応え。

個人的に残念なのは、作品が社会学的というか、科学技術に焦点を当てた作品ではあるものの「空想科学」を志向せず社会を描く方に向けられる点。科学そのものではなく科学史/科学哲学を専門とする氏の基本スタンスではあるのだろうけれど、もう一歩踏み込んだら面白いSFの可能性が拓けるのではないかと思うのだが。

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2006-10-06

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脳髄工場 (角川ホラー文庫)

脳髄工場 (角川ホラー文庫)

全体にホラーでない。アイデンティティ崩壊系の話は小林の得意分野ではあるが、それがあまりホラーな方向に向かなかった短編集。いや別に良いのだけれど。

「C市」が面白い。このネタはむしろ長編1冊書くべきだと思ったが、それはそれで中間が間延びしそうで難しい。

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ストリンガーの沈黙 (ハヤカワSFシリーズ・Jコレクション)

ストリンガーの沈黙 (ハヤカワSFシリーズ・Jコレクション)

ウロボロスの波動 (ハヤカワSFシリーズJコレクション)に続く、地球対AADDの話。言い替えるとムラ社会対モヒカン賊の話、とも言える。

ムラ人を醜く書き過ぎる点や3種の知性体同士の関連性が薄いあたりは少々気になったが、AADDと地球の性向の相違の源については面白い解釈*1だと思う。

明らかに続きを画策しているであろう終わりなので次回に期待。

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宵闇眩燈草紙 (7) (Dengeki comics EX)

宵闇眩燈草紙 (7) (Dengeki comics EX)

これにて完。拡げ過ぎちゃった風呂敷の収拾というか、やや大味に過ぎる感もないではないが、まあクライマックスということで。

今後J&Jの方を再開するのか新シリーズ書くのか知らないが、いずれにせよ彼らは端々で登場するのだろう。

後書きが一番後味悪いという(笑)

*1:作者による創造の作者による解説をそう呼ぶのも少々変な話ではあるが

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2006-10-02

しばらく書いてなかったら何読んだのか忘れてきた。

図書館で貸し出し履歴が閲覧できれば良いのだが。

[]『カクレカラクリ』 『カクレカラクリ』 - 芹沢蔵書目録 を含むブックマーク はてなブックマーク - 『カクレカラクリ』 - 芹沢蔵書目録 『カクレカラクリ』 - 芹沢蔵書目録 のブックマークコメント

カクレカラクリ?An Automaton in Long Sleep

カクレカラクリ?An Automaton in Long Sleep

コカコーラ120周年記念で作られたドラマの原作として書かれた小説、らしい。道理で作中に何度もコカコーラが登場する。


映像化前提の(つまりミステリ者でない人対象の)作品だからか、謎は随分と簡易で、描写の瞬間に答えが判る程度のもの。そういうパズル的楽しみは薄いが絡繰りの描写はなかなか面白いし、どちらかというと仕掛けよりは意図を探るのが目的のようなものだから、これはこれで楽しめる。

[]『蒲公英草紙 〜常野物語〜』 『蒲公英草紙 〜常野物語〜』 - 芹沢蔵書目録 を含むブックマーク はてなブックマーク - 『蒲公英草紙 〜常野物語〜』 - 芹沢蔵書目録 『蒲公英草紙 〜常野物語〜』 - 芹沢蔵書目録 のブックマークコメント

蒲公英草紙―常野物語

蒲公英草紙―常野物語

光の帝国―常野物語 (集英社文庫)以来だから10年以上か。明らかに大きな物語の一部を予感させ、続きを心待ちにしてきた常野物語シリーズ2作目。日露戦争前ぐらいの頃を舞台にした、常野物語の中では穏やかな話。

[]『エンド・ゲーム 〜常野物語〜』 『エンド・ゲーム 〜常野物語〜』 - 芹沢蔵書目録 を含むブックマーク はてなブックマーク - 『エンド・ゲーム 〜常野物語〜』 - 芹沢蔵書目録 『エンド・ゲーム 〜常野物語〜』 - 芹沢蔵書目録 のブックマークコメント

エンド・ゲーム―常野物語

エンド・ゲーム―常野物語

やっと続きが、と思ったらあっという間に終わり?常野物語の、少なくとも一つの血統の終わりを告げるストーリー。こちらはホラーに近いロー・ファンタジー。

[]『ユージニア』 『ユージニア』 - 芹沢蔵書目録 を含むブックマーク はてなブックマーク - 『ユージニア』 - 芹沢蔵書目録 『ユージニア』 - 芹沢蔵書目録 のブックマークコメント

ユージニア

ユージニア

金沢市で起きた17人毒殺事件を、それを取材した本を中心に14人の視点で描いたミステリ小説

冒頭にはわざと乱雑に重ねられた3枚6ページの証言、本分は微妙に傾けられ、無意識に違和感を感じさせる造本。ちょっと文庫版にはできない。

[]『ニッポン硬貨の謎 〜エラリー・クイーン最後の事件〜』 『ニッポン硬貨の謎 〜エラリー・クイーン最後の事件〜』 - 芹沢蔵書目録 を含むブックマーク はてなブックマーク - 『ニッポン硬貨の謎 〜エラリー・クイーン最後の事件〜』 - 芹沢蔵書目録 『ニッポン硬貨の謎 〜エラリー・クイーン最後の事件〜』 - 芹沢蔵書目録 のブックマークコメント

ニッポン硬貨の謎

ニッポン硬貨の謎

タイトルでにやり。明らかに若竹七海出題による競作 五十円玉二十枚の謎 (Sogen suiri)を前提としているのが判ったので、エラリー・クイーン一冊も読んでいないのについ手に取ってしまった。

中身は明らかにパスティーシュで、エラリー・クイーン(や訳者)の癖を真似ているのだろう。けれども元を知らないのであまり楽しめない。

ミステリとしては妙に隙を感じる-----事件解決に繋がる手掛りが偶然与えられたり-----のだが、それが北村薫の癖なのかエラリー・クイーンの癖なのか、どちらも殆ど読んでいない私には判別付かなかった。

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