芹沢蔵書目録 このページをアンテナに追加 RSSフィード

2004-07-05

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ヒーザーン (ハヤカワ文庫SF)

ヒーザーン (ハヤカワ文庫SF)

テラプレーン (ハヤカワ文庫SF)

テラプレーン (ハヤカワ文庫SF)

mixi経由ではじめてその存在を知った作家、ジャック・ウォマック?の6部作中、翻訳された2作。

世界設定そのものはサイバーパンク系の流れを汲むディストピアで、一企業が国家を支配するオーソドックスなもの。また科学技術関係でも際立った点は見られない。

しかし本書を語るにそんなものは必要ない。これはむしろ新手の文学作品なのだ。


ジャック・ウォマックはしばしば、作中人物に独特の言葉を語らせる。Ambientの語る複数の単語をひとつに合成したり、その他いろいろのやり方でつくられた多数の造語が古英語風の言い回しの中にちりばめられたドライコ世界のキーワード言葉や「ポスト文学」---ことばから修辞というものがほとんど失われた状態を意味している。この世界の住人達が話す言葉には名詞が動詞として多用され、助詞が欠け、ひとつのセンテンスの中の単語数がやたらと少ない。ビジネスライクで無機質な言葉だが、時に詩的な美しさを帯びもする---など、理解困難なほど変容した言葉を創造し、またそれを作中人物に語らせるのみならず地の文にも使用することで独特の雰囲気を醸し出し、英語圏の読み手からは絶賛と批判を受けた。

一例を(孫引きになるが)引用しよう。

「単独(ソロ)」とジェイク、「回収った。橋方で撒いた。灰は灰は灰、丸五尋」

"Solo," he said. "Pickuped. Did the drop bridgeways. Ashes to ashes to ashes, full fathom five."

「ヒーザーン」黒丸尚訳 1990

主語や目的語を極端に省き、殆ど動詞(及び動詞化された名詞、形容詞)だけで文が成立する。この他ポケットから出す「脱ポケット("Depocket")」、必要であることを一言で表す「必須化("essentialled")」など、くらくらするような表現があちこちに見られる。


翻訳を手がける黒丸尚氏は、通常ならば「?」や「!」を使うべきところを「……」や「っ」で表すなどこちらも癖のある文体で、ためにウィリアム・ギブスンの著作を最後まで読めなかったなどという声も聞かれるのだが、少なくとも本作に関して言えば特に読み難くは感じなかった/

大変残念なことに黒丸氏は死去されたため、以降の出版は困難の模様。とりわけ第一作「Ambient」はぜひ読んでみたかったが、流石に原文を読むのは困難を極めよう。


Jack Womack作品についてはhttp://park17.wakwak.com/~ddpp/womack/intro.htmlに詳しい。

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