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2004-07-27

[]『魔法飛行』 『魔法飛行』 - 芹沢蔵書目録 を含むブックマーク はてなブックマーク - 『魔法飛行』 - 芹沢蔵書目録 『魔法飛行』 - 芹沢蔵書目録 のブックマークコメント

魔法飛行 (創元推理文庫)

魔法飛行 (創元推理文庫)

加納朋子は名前と評判を知っていたものの最近まで読んでいなかった作家。『掌の中の小鳥』を読んで以来すっかりファンになったが、あまり図書館に出向かないもので少しづつしか読めない。

どの作品を読んでも人が殺されないのが良い。犯罪を書かないというわけではないのだが、殺人は意図的に避けているようだ。

そして短編の巧みな作家で、話の連なりが大きな話を生み出すあたりが心地良い。微妙に甘さが見えることもないではないけれど、それが気になることはない。


『魔法飛行』はその中でも一番穏やかなシリーズ。少女が綴る手紙の、身の回りに起きたちょっと不思議な出来事を受取人が解き明かして返信する。文面から得られる情報だけが頼りのアームチェア・ディテクティヴ。

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月曜日の水玉模様 (集英社文庫)

月曜日の水玉模様 (集英社文庫)

通勤電車で必ず乗り合わせる男は5本のネクタイをローテーションして着用していた。月曜は必ず水玉模様。

頼り無さげなサラリーマンが探偵を努める、ちょっと気の抜けたミステリー。

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どろぼう熊の惑星 (ハヤカワ文庫SF)

どろぼう熊の惑星 (ハヤカワ文庫SF)

ラファティは高校以来で、すっかり感覚を忘れていた。読み始めて暫くはO.ヘンリーのような皮肉っぽいユーモアの印象を受けたが、これはもっとキツい。むしろ去勢されていない民話のような、非現実的でドライな残酷さがある。あるいは何の教訓もオチもなく不条理な話が続く、『鏡の中の鏡』のような印象と言っても良い。

中では『イフリート』と『公正にして明大』が気に入った。SFらしい難解さは欠片もなく突き放したような終わり方が心地良い小品。


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ソフトウェア (ハヤカワ文庫SF)

ソフトウェア (ハヤカワ文庫SF)

ルーディ・ラッカーは名前だけは良く知っているのに(多分)全然読んでいない作家。取り敢えず受賞作から読んでみようと、閉架から引き出した。

全体的にサイバーパンク的な作品で、その手の作品を得意とする黒丸尚氏の訳が光る。

もう22年も前の作品なので、今見ると古臭いと感じる部分も沢山あるのだが(記録媒体が磁気テープだったり)一方で指紋認証など当時としては斬新なアイディアなのではないか……と思ったら、どうやら指紋認証システムの開発が開始されたのは1970年代、1982年には警視庁に最初の指紋照合装置が納入されている所を見ると、最新技術の一端をガジェットとして盛り込んだと見るのが正解だろうか。

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2004-07-13

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サリバン家のお引越し クレギオン (4)

サリバン家のお引越し クレギオン (4)

タリファの子守歌 〈クレギオン5〉

タリファの子守歌 〈クレギオン5〉

『タリファの子守歌』がやっと手に入ったので帰りの電車で読了。ついでに買ったまま放置していた『サリバン家のお引っ越し』も読み終える。

サリバン家の方は以前読んだときに今ひとつ盛り上がらない印象があり、新装版を買った時もなんとなく放置していたのだが、改めて読むと面白い。SFとしての大仕掛けは一つもなく、それが地味な印象を与える要因なのだが、実際のところスペースコロニーという特殊空間の物理特性を余すところなく描写し、また冒険活劇としても面白く仕上がっている。

タリファの方は、自転が遅く昼夜の気温差が大きいために薄明帯---昼夜の境目---で激しい対流による巨大な嵐が生じる惑星の話で、これは舞台装置そのものが大仕掛けとして機能している。SF的展開としてはどんでん返しも何もないが、空力性能の悪いリフティングボディ機で激しい嵐の中を飛ぶ様はそれだけで魅力的。


つくづく感じたのは、野尻抱介の「SFに於ける日常」の描写の巧みさ。ことに「お引っ越し」ではそれが抜きん出ている。引っ越しという日常的光景が、宇宙空間という特異な状況によって見知らぬ光景へと変貌する様は(その着眼点も含め)見事の一言。

同様の手腕は、『フェイダーリンクの鯨』に於けるリング生活者にも見ることができる。

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2004-07-05

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ヒーザーン (ハヤカワ文庫SF)

ヒーザーン (ハヤカワ文庫SF)

テラプレーン (ハヤカワ文庫SF)

テラプレーン (ハヤカワ文庫SF)

mixi経由ではじめてその存在を知った作家、ジャック・ウォマック?の6部作中、翻訳された2作。

世界設定そのものはサイバーパンク系の流れを汲むディストピアで、一企業が国家を支配するオーソドックスなもの。また科学技術関係でも際立った点は見られない。

しかし本書を語るにそんなものは必要ない。これはむしろ新手の文学作品なのだ。


ジャック・ウォマックはしばしば、作中人物に独特の言葉を語らせる。Ambientの語る複数の単語をひとつに合成したり、その他いろいろのやり方でつくられた多数の造語が古英語風の言い回しの中にちりばめられたドライコ世界のキーワード言葉や「ポスト文学」---ことばから修辞というものがほとんど失われた状態を意味している。この世界の住人達が話す言葉には名詞が動詞として多用され、助詞が欠け、ひとつのセンテンスの中の単語数がやたらと少ない。ビジネスライクで無機質な言葉だが、時に詩的な美しさを帯びもする---など、理解困難なほど変容した言葉を創造し、またそれを作中人物に語らせるのみならず地の文にも使用することで独特の雰囲気を醸し出し、英語圏の読み手からは絶賛と批判を受けた。

一例を(孫引きになるが)引用しよう。

「単独(ソロ)」とジェイク、「回収った。橋方で撒いた。灰は灰は灰、丸五尋」

"Solo," he said. "Pickuped. Did the drop bridgeways. Ashes to ashes to ashes, full fathom five."

「ヒーザーン」黒丸尚訳 1990

主語や目的語を極端に省き、殆ど動詞(及び動詞化された名詞、形容詞)だけで文が成立する。この他ポケットから出す「脱ポケット("Depocket")」、必要であることを一言で表す「必須化("essentialled")」など、くらくらするような表現があちこちに見られる。


翻訳を手がける黒丸尚氏は、通常ならば「?」や「!」を使うべきところを「……」や「っ」で表すなどこちらも癖のある文体で、ためにウィリアム・ギブスンの著作を最後まで読めなかったなどという声も聞かれるのだが、少なくとも本作に関して言えば特に読み難くは感じなかった/

大変残念なことに黒丸氏は死去されたため、以降の出版は困難の模様。とりわけ第一作「Ambient」はぜひ読んでみたかったが、流石に原文を読むのは困難を極めよう。


Jack Womack作品についてはhttp://park17.wakwak.com/~ddpp/womack/intro.htmlに詳しい。

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